トピックス

アーカイブ

2012年 2月 8日 [ トピックス ]

No.543-2:富山大学「和漢薬ウィキ」、ネットで和漢薬情報を発信!

富山大学和漢医薬学総合研究所(所長:済木育夫教授)がインターネット上で公開している「和漢薬ウィキ」。和漢薬の最新情報を集めたデータベースで、昨年2月の開設から約1年間で約9万件のアクセスがあり、好評を得ている。さらに内容を充実させ、世界一の和漢薬事典を目指す。


●日本唯一・伝統医薬学の研究成果を

 富山大学和漢医薬学総合研究所(所長:済木育夫教授)がインターネット上で公開している「和漢薬ウィキ」。和漢薬の最新情報を集めたデータベースで、昨年2月の開設から約1年間で約9万件のアクセスがあり、好評を得ている。さらに内容を充実させ、世界一の和漢薬事典を目指す。

 同研究所は、300年余に及ぶ“くすりの富山”の伝統をバックボーンにした、日本唯一の伝統医薬学の研究所。天然薬物資源の研究開発、和漢医薬学の基礎研究の推進と東西医薬学の融合、漢方医学における診療治療体系の客観化と漢方医療従事者の育成、伝統医薬学研究の情報発信拠点の形成などに取り組んでいる。2010年度から文部科学省の「和漢薬の科学基盤形成のための共同利用・共同研究拠点」に認定され、他機関と研究を進めるとともに、情報発信に力を入れている。

 同研究所では、これまで民族薬物資料館に保管されている生薬の標本情報や学術情報を「民族薬物データベース」として収録。蓄積してきたこれらの貴重な情報を再編集し、新たに方剤などに関するデータを加えて、昨年2月から「和漢薬ウィキ」として公開を始めた。多分野の研究者から一般の人まで幅広く活用してもらうことが大きな目的だ。

 名称は、インターネット上の百科事典「ウィキペディア」にちなんだ。同研究所データベース委員会の委員長を務める田中謙准教授が全体の管理を担当し、登録した富山大学の研究者ら約30人が編集や記事を作成。無料で公開している。

 田中准教授は、「健康志向が高まるなか、研究者だけでなく、一般の方からのアクセスもあるようだ。大学の研究成果を社会に還元していくことは意義のあること。一般の方にもわかりやすいように、豆知識のようなコーナーを設けていくことも今後考えていきたい」と話している。

●182種類の「生薬」、348種類の「方剤」を掲載

 「和漢薬ウィキ」には現在、解熱・解毒効果などがある“牛蒡子(ごぼうし)”、苦味健胃薬の “センブリ”、滋養・強壮効果などがある“山薬(さんやく)”、強壮・鎮痛効果などがある“杜仲(とちゅう)”など、182種類の「生薬」が掲載されている。それぞれの生薬名、原植物科名、薬用部位、薬効、適応症などの項目が並ぶ。

 生薬を組み合わせた「方剤」には、頭痛・発熱などに効能がある“葛根湯(かっこんとう)”、更年期障害・冷え性などへの“桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)”、胆石症・胆のう炎・肝機能障害などへの“大柴胡湯(だいさいことう)”など348種類を掲載。用法・用量、原典、薬効・薬理などを紹介。トップページには、新着情報をはじめ、和漢薬とはなにか、活性・作用、成分なども解説されている。なお、項目の中にはまだ整備中で、表示されないものもある。

 「和漢薬ウィキ」では、化合物のスペクトルデータ、生薬エキスのLC-MSデータ(液体クロマトグラフ質量分析)などの情報を、登録した研究者に提供している。データベースを活用することにより、新化合物と既知物質のある程度の同定(同一であると見きわめること)を行うことができ、研究の効率化を図ることができる。また、活性を担う生薬や化合物の絞り込みによって、研究をスピードアップさせることも可能だ。

 同研究所では、将来、海外の研究機関の協力を得て、世界の伝統医学についての情報もより充実させていく考えだ。

 済木教授は、「生薬学、薬理学、臨床医学など異なる分野に別々にあったデータや、研究所でこれまで蓄積してきたデータを1カ所にまとめることができた。今後、掲載する生薬や方剤を増やし、研究所での実験結果、臨床応用の結果なども紹介していく。病気の治療に和漢薬がより使われるように、世界で最も信頼されるグローバルなデータベースを築いていきたい」と話している。

▲「和漢薬ウィキ」を説明する済木教授(右)と田中准教授


問い合わせ
●富山大学和漢医薬学総合研究所
TEL.076-434-2281(代表)
http://www.inm.u-toyama.ac.jp/
http://wakandb.u-toyama.ac.jp/wiki/

コメント

その他のトピックス

ページの先頭へもどる↑