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2018年 1月 24日 [ イベント ]

No.841:高志の国文学館開館5周年企画展「竹久夢二 音楽を描く」

 大正ロマンを代表する富山県ゆかりの画家、竹久夢二。高志の国文学館(富山市舟橋南町)では、開館5周年記念の企画展第4弾として、夢二と音楽の関わりに焦点を当てた「竹久夢二 音楽を描く」を開催中<平成30年2月26日(月)まで>。本展をはじめ、蓄音機実演、ヴァイオリン・ピアノコンサート、文学講座など関連イベントも楽しみだ。

夢二が手がけた楽譜表紙画の魅力に迫る


▲蓄音機の実演

 長いまつげに憂いを帯びた大きな瞳の女性……"夢二式美人"と称される独特の美人画のスタイルを確立した竹久夢二(1884~1934)。大正期から昭和初期にかけて、歌曲を中心に、数多くの楽譜の表紙画を手がけた。企画展「竹久夢二 音楽を描く」では、Ⅰ「セノオ新小唄―劇中歌『カチューシャの唄』の流行」、Ⅱ「セノオ楽譜―劇場・レコード・ラジオの時代の中で」、Ⅲ「中山晋平民謡曲―映画主題歌『東京行進曲』の人気」、Ⅳ「夢二が楽譜表紙画を描いた時代『婦人グラフ』に見る音楽文化」の4つのコーナーに分けて、楽譜の表紙画を中心に292点を展示。現在国内で開催されている夢二の企画展では最大規模となる。

 当時、流行歌からオペラの歌曲、小唄、民謡まで、和洋、新旧を問わず、手軽に音楽に親しめる手段となっていたのが楽譜だ。多くの楽曲が楽譜として出版され、その表紙画は現代のレコードジャケットのような役割を持っていた。夢二は時代の音楽文化を映し出すように表紙画を描き、詩なども創作した。

 展示のコーナー名ともなっているセノオ新小唄、セノオ楽譜とは、妹尾幸陽氏が企画経営を行ったセノオ音楽出版社が刊行したもので、妹尾氏は夢二の詩を愛し、自らメロディをつけて一部の楽譜を刊行した。夢二はセノオ新小唄のすべての表紙画を手がけた。

 夢二が初めて楽譜の表紙画を手がけたのが、当時人気を博した劇団「芸術座」の看板女優、松井須磨子が演劇「復活」の劇中で歌って大流行した「カチューシャの唄」。白いエプロンを付けた黒髪の少女を素朴なタッチで描いている。胸に手を当て、首を傾けている姿も印象的。芸術座の演劇「その前夜」の劇中歌として歌われた「ゴンドラの唄」の表紙画では、椅子にもたれて歌う女性と背景にゴンドラを描いている。

 欧米を中心に世界的なプリマ・ドンナとなった三浦環が歌う「お江戸日本橋」。夢二は1916年にこのセノオ楽譜の表紙画を担当し、日本橋をわたる和装の女性を描いた。


▲Ⅱ「セノオ楽譜―劇場・レコード・
ラジオの時代の中で」(左)
▲アベマリア、カルメンなどの楽譜の
表紙画(中央)
▲Ⅲ「中山晋平民謡曲―映画主題歌
「東京行進曲」の人気」(右)

 夢二が作詞を手がけた「宵待草」は1918年にセノオ楽譜から刊行されて流行歌となった。表紙画は和装の女性と洋装の女性の2種類があり、洋装の女性は関東大震災後に新たに表紙画として登場し、鎮魂と復興を祈るように首にロザリオをかけている。

 中山晋平作曲の「東京行進曲」の楽譜の表紙画では、ボブカットの洋装の女性がリキュールグラスを傾けている。昭和初期の東京の流行などが感じられる。

●蓄音機の実演、ノスタルジックな音色

 本展の関連イベントとして、会期中の毎週金曜、土曜、日曜の11:00~11:30には、「宵待草」、「ゴンドラの唄」、「からたちの花」、「君よ知るや南の国」、「お江戸日本橋」など、夢二が楽譜の表紙画を手がけた楽曲のSPレコードをサロン蓄音機(英グラモフォン社、HMV Model163、1927~1931:高岡市立博物館蔵)で流している。鉄の針がレコードに落とされた瞬間、会場はセピア色に。ノスタルジックな音色が心に深く染みわたるだろう。

 2月3日(土)14:00~15:30には、竹久夢二美術館(東京都)の学芸員・石川桂子氏による文学講座「大正ロマンの画家・竹久夢二―その魅力と『セノオ楽譜』の仕事・みどころ」を開催。(参加無料だが、電話、FAXにて申込みが必要)2月17日(土)14:00~14:45には、竹久夢二表紙画楽譜による音楽会「ヴァイオリン・ピアノコンサート」を行う。ヴァイオリンは藤田千穂氏、ピアノは藤井亜里沙氏。(参加無料、申込み不要)2月18日(日)14:00~14:40には映画DVD上映会を開く。上映作品は、「唐人お吉」(溝口健二監督:1930年)と「東京行進曲」(溝口健二監督:1929年)。(参加無料、申込み不要)

 高志の国文学館では、「楽譜の表紙画を手がけた夢二はグラフィック・デザイナーの草分け的な存在と言えます。本展では、表紙画をはじめ、昭和初期のピアノや、蓄音機、レコード、ラジオなどを展示しています。楽譜の表紙画を見ながら、歌や曲に耳を傾けた当時の音楽文化をお楽しみください」と話している。

 なお、TJN読者の皆さんに「竹久夢二 音楽を描く」の招待券を抽選で5組10名様にプレゼントします。プレゼント応募フォームに、プレゼント内容「竹久夢二 音楽を描く」・氏名・郵便番号・住所・メールアドレス・電話番号・記事を読んでのご感想をご記入のうえ、お送りください。平成30年1月28日(日)締切り。発表は発送をもって代えさせていただきます。

→プレゼント応募フォームはこちら

問合せ
●高志の国文学館
TEL.076-431-5492
FAX.076-431-5490
http://www.koshibun.jp/

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