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2021年 3月 3日 [ イベント ]

No.989:歌人であり、富山の文化そのものである人―企画展「久泉迪雄の書斎からー“悠かなり 富山の文化”」

高志の国文学館(富山市舟橋南町)で企画展「久泉迪雄の書斎からー“悠かなり 富山の文化”」を開催中<3月27日(土)まで>。富山の自然と風土、文化を愛する歌人として、多くの文学者、美術家との出会いを通じて豊かに広がる久泉氏の“多彩な仕事”を紹介する。

●多彩な活動は、富山の芸術・文化の歩みを表す


▲第一章のコーナー(左)
▲會津八一の墨書『和敬清寂』(右)

 歌人・久泉迪雄(ひさいずみ・みちお)氏は、1927年、画家の両親のもとに生まれ、金沢工業専門学校(現・金沢大学工学部)を卒業後、技術者、数学・工学、国語、時には英語の教員を務めた。富山県立近代美術館(現・富山県美術館)副館長、高岡市美術館長を歴任し、職藝学院の創設に携わり、富山県芸術文化協会、富山県歌人連盟はじめ、数多くの文化団体の運営を支え続けてきた。 

 なにより富山の自然と風土、文化を愛する歌人として、大伴家持の歌のこころを引き継ぎ、万葉集の故地に豊饒な文化が花開くことを願い、93歳のいまも精力的に活動している。1951年に「紫苑短歌会」、 1960年歌誌「林間」(東京)、日本歌人クラブに入会。1966年富山県歌人連盟事務局長、2000年同会長を経て、現在名誉会長。歌誌『綺羅』を発行する綺羅短歌の会を主宰する。

 本展では、自然科学と文学の双方に通じ、美術、工芸に造詣が深く、多くの文学者、美術家との出会いを通じて豊かに広がる久泉氏の“多彩な仕事”を紹介する。「久泉迪雄の書斎から」という企画展タイトルや、展示室内の書斎の一日を撮影した映像、インタビュー映像などを通して、文学展の固いイメージを払拭し、気軽に見て楽しめる展示となっているのが特徴だ。

 出品資料は約170点。書斎を彩ってきた蔵書、色紙、短冊、書簡の展示は、人との出会いが新たな創作や活動の源になってきたことを表す。また、久泉氏の多彩な活動が富山の芸術・文化の歩みそのものであることを実感できる展示となっている。

●人との出会いを大切に、出会いがもたらす変化を受け入れ


▲久泉氏の父、共三の作品《寒菊図』》


▲「諷詠三百六十五日―暮らしに寄り添う短歌」

 展示は3章立ての構成。第1章の「美のこころ美のかたち-風土が育んだ清冽な文化」では、久泉氏が企画展に際して選んだ富山県美術館、高岡市美術館所蔵の思い出深い富山ゆかりの絵画作品を、自身のことばとともに紹介している。大島秀信の《樹間》(1983年:富山県美術館蔵)には「――大島さんの芸術の第一セクションは、やはり〈森〉のシリーズである。対象としての森を、単に風景として描くのではないことは言うまでもない。制作のテーマ、モチーフとして、常に大島さんを駆り立てるのは、人間と共存し、人間の存在を支えている、大自然の摂理であろう。――」と、ことばを寄せている。

 第2章の「いい人いい言葉との出会い―書斎の書画と書簡の物語」では、人とことばとの出会いの記憶がつみかさなり、新たなことばが生まれる場所・書斎に大切に保存されてきた書画や書簡を、その出会いの物語とともに紹介。會津八一の墨書『和敬清寂』は富山県出身の漆芸家・山崎覚太郎との約束により譲り受けた作品という。久泉氏の父、共三の作品《寒菊図》、評論家・大岡信の署名入りの著作『人麻呂の灰』、高岡市美術館のシンボルマーク(松永真氏制作)をデザインしたポスター、源氏鶏太、佐伯彰一らの直筆原稿、長崎莫人、横山豊介らの書簡なども展示している。

 第3章の「窓明かり-数学と文学が支えた活動の足跡」では、多彩な仕事に関わってきた足跡を、思い出の品、自身の短歌や文章とともにたどる年譜として構成している。

 「春景 三月四日」いつしかに雨降りいでて濡れ縁の うるみの色のしみじみと春――展示の冒頭では、「諷詠三百六十五日―暮らしに寄り添う短歌」として、2001 年から毎日作り続けている短歌から、会期 50 日分の歌を選んで展示。富山の暮らし、自然、季節の移り変わりを感じとってみよう。

 同館エントランスロビーでは、富山の文芸同人誌、北陸の短歌同人誌の展示・販売も行っているので、ぜひ手にとってほしい。

 高志の国文学館では、「愛好する絵画、舞台芸術、日用品を、久泉氏自身の短歌や言葉を添えて展示紹介しています。久泉氏によって選ばれたこれらの芸術から、風土によって磨かれた、共通する本質的な美を感じ取っていただきたい」と話している。

問合せ
●高志の国文学館
TEL.076-431-5492
FAX.076-431-5490
http://www.koshibun.jp/

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