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2019年 12月 4日 [ イベント ]

No.936:戦後の墨画の変容を鑑賞するひととき

富山県水墨美術館で「墨画×革命(レボリューション)ー戦後日本画の新たな地平」が開幕した<2020年1月13日まで(月・休)>。戦後に制作された墨画的表現を概観し、伝統の受容と変容の状況を画家たちの作品から探る、意欲的な企画展だ。

●墨の濃淡や線描の美しさ


▲「墨画×革命(レボリューション)
ー戦後日本画の新たな地平」

 本展のタイトルになっている「墨画」とは、墨を用いて制作された絵画を指す。山水画や水墨画も墨画の範疇である。戦後、流入した西洋的な思想は日本の文化に大きな変革をもたらした。厚く塗られた洋画の持つ量感、質感を求める絵画が主流となり、墨の世界は日本画の第一線から遠ざかっていった。そんな中で、濃淡の美しさや線描の繊細さなど、墨の表現力に新たな可能性を求めた作家たちが現れた。それは、新たな地平を拓く、革命的なパラダイムシフトの機会でもあった……。

 本展では、大正から昭和初期にかけて活躍した作家たちと、戦後に墨の表現に取り組んだ作家たち16人の、戦後に描かれた39点を展示し、作家たちの意識、表現がどのように変化していったかを探る。

 何人かの作家たちを紹介しよう。近藤浩一路は、墨の微妙な濃淡やかすれを用いて光と影を表現し、抒情豊かな水墨画を描いた画家。本展に出品の≪田毎の月≫、≪竹林≫は西洋の印象派の絵画のようだ。<※≪田毎の月≫の展示は12月8日(日)まで>

 榊原紫峰は、東洋絵画の伝統的主題である花鳥画に西洋絵画の手法を融合し、精神性豊かで清新な近代花鳥画の世界を開拓した。本展に展示の≪梅花小禽≫、≪紅梅小禽≫では梅の古木に小鳥が遊ぶ。晩年の紫峰が好んで描いた画題で、墨の濃淡と描法のみで描き出す水墨画の極致のような作品だ。

 児玉希望は近代西洋絵画の研究に取り組む一方、師である川合玉堂から学んだ水墨画の研究を生涯続けた画家。本展では、墨と金泥を用いた実験的な作品≪山≫、抽象画のような≪梵唄≫などを展示する。<※≪梵唄≫の展示は12月8日(日)まで>


▲丸木位里の作品などを前に(左)
▲篁牛人≪西王母と小鳥≫(右)

 ≪原爆の図≫など社会性の強い作品を制作した丸木位里(まるきいり)。≪牡丹≫では、墨のにじみと定着の限界点を戦前から探り続けてきた画家ならではの濃密な絵肌の妙が堪能できる。

 篁牛人(たかむらぎゅうじん)は富山県富山市に生まれた画家。紙に墨を擦り込むように定着させる独自の渇筆画法を駆使し、細く弾力のある筆線で異様なほどデフォルメしたモチーフを描いた。≪西王母と小鳥≫は薄い衣を身にまとい、片肘をついて横たわる女仙、西王母が描かれている。半裸で横たわる姿は、西洋絵画における裸体の女性像を彷彿とさせる。

●革新的な取組みを感じさせる作品群

 富山県朝日町ゆかりの岩﨑巴人(いわさきはじん)の作品≪鳥の発生≫は、まるで異世界へ羽ばたこうかとする鳥を描いている。原始美術や仏教思想に根源を求めてきた作者の思いが伝わる。

 戦後日本画壇の風雲児、革命児などと評された横山操の≪川≫は縦2m以上、横6m以上と本展中で最も大きな作品。荒々しいタッチで描かれた縦横の強い線が独特の臨場感を醸す<※≪川≫の展示は12月8日(日)まで>。


▲下保昭≪称名暮雪≫などの作品を鑑賞

 富山県砺波市出身の下保昭は、線を用いず形象を表現する手法やプラチナ泥に黒の岩絵具を用いるなど、独自の墨画調表現を生み出した。出品作≪称名暮雪≫は、立山連峰と落差日本一の称名滝をモチーフにした作品。プラチナ泥を多用し、雄大な景観を幽玄に描き出している。

 この企画展にあわせたイベントも楽しみだ。12月7日(土)にミュージアムコンサート「二胡の音色にのせて」<出演:季彩霞氏>、14日(土)には講演会「水墨の話 すみからすみまで」<講師:古田亮氏(美術史家・東京藝術大学大学美術館准教授)>がある。学芸員によるギャラリートーク<12月21日(土)、1月11日(土)>にもぜひ参加を。また、12月10日(火)からは一部作品の展示替えを行う。展示作品はホームページに掲載されている出品目録で確認を。

 県水墨美術館では、「戦後、画家たちは西洋画の影響を受けながら、日本画はどうあるべきか模索してきました。墨との向き合い方にそのことが示されているように思われます。ぜひ鑑賞ください」と話している。


問合せ
●富山県水墨美術館
TEL.076-431-3719
FAX.076-431-3720
http://www.pref.toyama.jp/branches/3044/3044.htm

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