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2017年 12月 6日 [ イベント ]

No.835:工芸とアート&デザインの新たな可能性を発信!富山県美術館で2展を同時開催中

 工芸の未来と可能性を創出し、北陸から“新しい工芸ムーブメント”を発信する「国際北陸工芸サミット」。そのメイン事業の「ワールド工芸100選」展と、富山県美術館開館記念展Part2として素材とその変容をテーマに「素材と対話するアートとデザイン」が富山県美術館(TAD)で同時開催されている<2018年1月8日(月・祝)まで>師走と年末年始は、富山で工芸やアート&デザインにふれるひとときを。

●U-50国際北陸工芸アワード、入賞者決定


▲「四次元展開図」(川原隆邦作)(左)
▲「ワールド工芸100選」展の会場(中央)
▲「COLOR OF TIME」(エマニュエル・
ムホー作)<開館記念展Part2「素材と
対話するアートとデザイン」>(右)

 「国際北陸工芸サミット」は文化庁と北陸三県の連携による開催で、初年度となる今回は富山県がホストを務める。その中心的な展覧会である「ワールド工芸100選」展は、「THIS IS工芸―伝える。創る。―」をテーマに、100点以上の作品を通して世界各地の工芸の潮流と動向を探り、工芸という文化の持つ意義と未来の可能性を考える。

 会場では、50歳以下を対象にした公募展「U―50国際北陸工芸アワード」入選作品や世界の有識者で構成された「国際北陸工芸サミット」選考委員会メンバーのキュレーションによる作品を、日本、韓国、台湾、オランダ、イギリス、アメリカ、中国、イタリア、スイスのブースに分けて展示。また、富山や北陸を代表する工芸作家の作品も展示されている。作家たちの工芸への思いを感じ取ってみよう。

 「U-50国際北陸工芸アワード」には、国内外から403件の応募があり、最優秀賞(1点)、優秀賞(1点)、奨励賞(4点)がこのほど決まった。最優秀賞に輝いた川原隆邦氏(富山県立山町)の作品「四次元展開図」は、極薄の和紙を33枚重ね合わせた作品。透かしの技術を用いて和紙に模様を入れることで、全体を重ねると、青竜、朱雀、白虎、玄武の四神の姿が厳かに浮かび上がる。川原氏は、和紙の原料となる楮(こうぞ)を育てている畑などを一般に見てもらい、収穫などの作業を体験してもらうなど、「透明性」、「コミュニティ」、「先人たちの想い」を大切にしているとのこと。ぜひ会場で見たい作品だ。


▲「Perishable Vases(腐敗しやすい
ベース)」(マルチン・ルサック作)

 優秀賞に選ばれたマルチン・ルサック氏(イギリス)の「Perishable Vases(腐敗しやすいベース)」は、素材に本物の花、貝殻、蜜蝋、樹皮の樹脂を用いた作品。ルサック氏にとって、腐敗し、老朽化する材料が作品づくりの重要な地位を占めており、生の要素を持つ物体を作るために有機的な素材から作品を作り出す。

 富山県文化振興課では、「100点以上の作品を通して、世界各地の工芸の潮流と動向を探り、工芸という文化の意義と未来の可能性を考えています。目で見て、感じて、考えて、工芸の魅力を心ゆくまでご堪能ください」と話している

●時の流れ、100色のグラデーションで表現

 「素材と対話するアートとデザイン」では、木や金属から新素材まで、Ⅰ「アート×素材」、Ⅱ「革新×素材」、Ⅲ「素材のきほん」、Ⅳ「インスタレーション~アートとデザインをつなぐ」の4つのセクションを通して、アートとデザインの世界を紹介している。

 「アート×素材」では、“色の魔術師”と称されるエマニュエル・ムホー氏(東京在住フランス人建築家/デザイナー)の作品「COLOR OF TIME」が圧倒的な存在感を放っている。

 ムホー氏は、「色切/shikiri」を常に創作のコンセプトとしている。色切とは、色で空間を仕切る、色で空間をつくること。色を二次元的な仕上げではなく、三次元空間を形づくる一番大切な要素として捉える考え方である。

 本展のための新作「COLOR OF TIME」は、展覧会初日11月16日の富山市の空(6:30の日の出から19:49の日没までの計799分間)の変化、時の流れを紙で表示した数字と100色のグラデーションで視覚的に表現。「色」という感覚的な要素に、「時間」という数学的な要素をかけ合わせ、視覚的に空間を作り出すインスタレーションだ。

 「革新×素材」では、富山ガラス工房と三芝硝材とのコラボレーションで開発された虹彩ガラスがユニーク。虹彩ガラスとは、2枚の型板ガラスを曲げ、その間に虹彩フィルムを合わせガラスで挟み込むことでガラスのもつ光の透過と反射の効果を高めたもの。来場者は照明を当てることができる。光の当て方による色の変化を楽しんでみたい。

 「インスタレーション~アートとデザインをつなぐ」に展示された「Time-lapse」(Tangent作)は、魚の群れを表現したキネティック・スカルプチャー(動く彫刻)。全10層で合計100匹の魚型のプレートが周回する。タイトルは“時間のずれ”という意。約10分に1度だけ、すべての層の魚が縦にまっすぐに並ぶ瞬間をお見逃しなく。なお、主要な部分はアルミニウム製で、鏡面仕上げの魚型プレートには高岡の金属加工の技術が生かされている。

 「素材と対話するアートとデザイン」は写真撮影が可能。SNSでの写真使用が可能な作品には、インスタグラム、フェイスブック、ツイッターでのシェア可能(ハッシュタグ「#富山県美術館」または「#TAD」)の表示がある。来場の記念に気軽に撮影し、感動や魅力を伝えてほしい。(一部、撮影不可、SNS不可の作品があるので注意を。)


▲「COLOR OF TIME」(エマニュエル・
ムホー作)(左)
▲虹彩ガラス(富山ガラス工房と三芝硝材
とのコラボレーション)(右)

 富山県美術館では、「木や金属などの素材は工芸だけでなく、デザインやアートの領域をも縦断する表情を見せます。そして、新しい素材も生まれています。さまざまな素材が放つ魅力、触発されて生まれる造形の世界をお楽しみください。クマのグッズや絵柄の入ったものを持参された方には“クマ割”(団体割引料で観覧可)を実施しています」と話している。

 なお、12月17日(日)まで富山県水墨美術館でも工芸にちなみ、人間国宝176人の作品179点等を紹介する「日本のわざと美」展が開催されており、県美・水美どちらかの企画展の半券を持参いただくと、他方の企画展の観覧料が割引(団体割引料で観覧可)になる。そちらも併せて観覧し、工芸の歴史や奥深さを堪能してみてはいかがだろうか。

問合せ
「国際北陸工芸サミット」について
●富山県生活環境文化部文化振興課
TEL.076-444-3436
FAX.076-444-8900
http://www.pref.toyama.jp/cms_sec/1718/
https://kogeisummit.jp/

富山県美術館開館記念展Part2
「素材と対話するアートとデザイン」について
●富山県美術館
TEL.076-431-2711
FAX.076-431-2712
http://tad-toyama.jp/

富山県水墨美術館「日本のわざと美」展について
●富山県水墨美術館
TEL.076-431-3719
FAX.076-431-3720
http://www.pref.toyama.jp/branches/3044/3044.htm

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