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2016年 7月 27日 [ イベント ]

No.766:アートとアニメにふれる富山の夏のひととき

 2017年、富岩運河環水公園に新築移転する富山県立近代美術館。現美術館での最後の大規模コレクション展となる「ありがとう近代美術館PART1 マイ・ベスト×ユア・ベストーわたしたちのコレクション」を開催中<~平成28年9月4日(日)>。美術ファン必見の約100点の展示、美術家の講演など、観て、聴いて楽しめる内容。また、高志の国文学館の企画展「面白い箱!アニメづくりのスタジオの中へ」も併せて紹介。夏休み、富山で家族と一緒にアートとアニメに触れ、感性を磨いてみては。

●作品への言葉「わたしの1点」をチェック


▲富山県立近代美術館:
「ありがとう近代美術館PART1
マイ・ベスト×ユア・ベスト
ーわたしたちのコレクション」の会場(左)
▲高志の国文学館:
「面白い箱!アニメづくりのスタジオの中へ」
の会場(右)

 富山県立近代美術館(富山市西中野町)は2017年、「富山県美術館」として生まれ変わる。春に一部開館し、GWまでに子ども向けの遊具を設けた「オノマトペの屋上」、夏後半~秋頃までの美術館開館に向け、工事が着々と進められている。本展が、現在の建物の美術館での最後の大規模なコレクション展となる。

 新築移転オープンするにあたり、近代美術館では「県民とともに成長する美術館」という理念から、「わたしたちの美術館」と題したプロジェクトを行っており、その一環として2014年春に「富山近美コレクション ここが聞きたいQ&A」という質問形式のアンケートを実施。来館者に収蔵作品に関する質問や好きなところなどを聞き、それに対して回答した。

 本展では、質問への回答や作品の見どころなどを織り交ぜながら、またコレクションにゆかりある方々の作品への言葉「わたしの1点」を添えて、来館者の人気の高い作品、約100点を選りすぐり展示している。「わたしの1点」の執筆者は、絲山秋子氏(小説家)、大岡信氏(詩人)、内藤廣氏(建築家、新美術館設計者)、永井一正氏(グラフィックデザイナー)、中西進氏(高志の国文学館長)、細田守氏(映画監督)、山内マリコ氏(作家)12名。本展観覧者には「わたしの1点」を集めたリーフレットをプレゼントしている。

 本展の展示作品をいくつか紹介しよう。会場の冒頭で来場者を迎えるのが、トム・ウェッセルマンの「スモーカー#26」(1978年)。小中学生、高校生に圧倒的に人気の高い作品だ。真っ赤な唇に朱色のマニキュア、タバコの煙と、奇妙な構図が強烈なエロティシズムを放っている。

 アルベルト・ジャコメッティの「裸婦立像」(1950年頃)は、高さ21cmのブロンズの像。小説家・絲山秋子氏の小説『不愉快な本の続編』では、主人公がこの像に魅せられて、近代美術館の館内で突拍子もない行動をとる姿が細やかに描写されている。

 横尾忠則の「想い出と現実の一致」(1998年)は、和服姿の女性や地球、土星、猫、セーラー服姿の少年(横尾氏本人)らが同画面に登場するユニークな作品。


▲会場入り口(左)
▲横尾忠則
「想い出と現実の一致」(1998年)(中央)
▲福田美蘭
「ポーズの途中に休憩するモデル」(2000年)
 ©Miran Fukuda(右)

 福田美蘭の「ポーズの途中に休憩するモデル」(2000年)は、レオナルド・ダ・ヴィンチの「モナ・リザ」を連想させる作品。ダ・ヴィンチがみたであろう休憩中のモデルの姿を、作者の福田美蘭が想像して、ダ・ヴィンチの画風をまねて描いた。

 亀倉雄策の「東京オリンピック」(1961~63年)は1964年の東京オリンピックポスター3部作。戦後日本の代表的なポスターの1つで、世界を照らす太陽や日の丸を連想させる大きな赤丸が印象的だ。

 現代の美術館をみると、ニューヨークスタイルといった、白い空間、小部屋での作品展示が流れとなっており、この近代美術館のような大空間での展示は珍しい。逆にそれが魅力的であったりもするのだが……。12月の「ありがとう近代美術館 PART2」は、建物と作品に焦点を当てた内容になるという。こちらもぜひ鑑賞したい。

 県立近代美術館では、「本展では、多くの人が“わたしたちの(ための)コレクション”として作品に愛着を持ってほしい、楽しく見てほしいという思いが基本にあります。作品を見るのが好きだという人々の気持ちが高まり、それが新しい美術館に引き継がれていくことを願っています。アーティストたちのアトリエや自宅に遊びに行く感覚で本展にいらしてください。大空間の中で間近で作品が鑑賞できます」と話している。

●アニメスタジオの世界、ワクワク体感

 高志の国文学館(富山市舟橋南町)の企画展「面白い箱!アニメづくりのスタジオの中へ」<~平成28年10月10日(祝・月)>では、アニメーションづくりの現場であるアニメスタジオを会場に再現。アニメがどのように作られていくのか、その舞台裏をのぞくことができる興味深い企画だ。南砺市にあるアニメーション制作会社「P.A.WORKS」(ピーエーワークス)に特別協力をいただき、「日本動画協会」と「日本アニメーター・演出協会」の後援をえて実現した。7月9日の開幕後、県内外から熱心なアニメファン、若い世代が訪れている。


▲「面白い箱!アニメづくりのスタジオの中へ」
の入り口

 会場では、物語を考える「企画」や、物語を文章にする「シナリオ」、絵にする「絵コンテ」、動画に音を入れる「アフレコ・ダビング」などアニメづくりの工程を、P.A.WORKSで実際に使われている机や道具などを用いて紹介している。同社が2014年に制作したアニメ『SHIROBAKO』(シロバコ)のキャラクターの宮森あおいらがナビゲーション役を務める。ファンにはたまらなく魅力的な演出といえるだろう。なお『SHIROBAKO』は、アニメ制作の現場を描いた作品で、東京アニメアワードフェスティバル2016でアニメオブザイヤーのグランプリ(テレビ部門)を受賞している。

 アニメ制作の現場では、デジタル化が進んでおり、作業スピードは速くなったが、企画やシナリオはもちろん、キャラクターデザイン、絵コンテ、背景美術など、実際にはいまも人が手をかけて制作することや描くことが多い。人の想像力、イマジネーションがカギ。「デジタル化されたが、求められることは多くなり、制作の大変さは昔とあまり変わらない」という解説コメントが印象的だ。企画展の一角では、2003年放送の『アストロボーイ・鉄腕アトム』で使われた貴重なセル画も展示されている。アニメ制作の今と昔が分かる仕掛けとなっている。

 富山県が毎月第3日曜と定めている“とやま県民家庭の日”を描いた作品『マイの魔法と家庭の日』をはじめ、南砺市を舞台モデルにした「true tears」、『恋旅~True Tours Nanto』、 現在放送中で全国で人気となっているロボットアニメ『クロムクロ』の4作品をパネルや映像で紹介するコーナーもある。『クロムクロ』は富山県を舞台にしており、立山連峰や黒部ダム、富山県庁や富山空港などのシーンが登場するのでお見逃しなく。

 アフレコのコーナーでは、キャラクターに声を吹き込む体験ができる。また、アニメを作ろうコーナーでは、見本のキャラクターに色を塗り、スキャナーで取り込んでアニメーションにすることができる。描いた絵は持ち帰ることができるので、良い思い出になるだろう。

 講演会<「アニメツーリズムについて」:8月21日(日)、「文学とアニメ」:9月10日(土)>、ギャラリートーク<9月24日(土)>、アニメ作画チャレンジ教室「キャラクターを動かしてみよう!」など関連イベントも多数開催。参加申込みなど、詳しくは高志の国文学館のホームページ(http://www.koshibun.jp/)にアクセスを。

 高志の国文学館では、「本展では、アニメづくりの舞台裏を知ってもらい、そこに込められた情熱やワクワク感をみなさんにお伝えしたいと考えています。キャラクターと一緒に記念撮影できるコーナーもあります。夏休み、家族ででぜひご来場ください」と話している。

問合せ
「ありがとう近代美術館PART1 マイ・ベスト×ユア・ベストーわたしたちのコレクション」について
●富山県立近代美術館
TEL.076-421-7111
FAX.076-422-5996
http://www.pref.toyama.jp/branches/3042/3042.htm

「面白い箱!アニメづくりのスタジオの中へ」について
●高志の国文学館
TEL.076-431-5492
FAX.076-431-5490
http://www.koshibun.jp/

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