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2004年 9月 29日 [ トピックス ]

No.163-2:富山医科薬科大学の英知を生かす−30年ぶりに「一般用漢方薬の処方の手引き」改正


●収載する漢方薬を210種類から約350種類に

 厚生労働省では、2005年以降に「一般用漢方薬の処方の手引き」を改正する。この手引きは、厚生省(当時)が1975年に監修・発刊したもので、臨床試験や処方箋がなくても薬局店頭で販売できる漢方薬210種類を定め、効果や効能、構成する生薬などを明記している。漢方薬の製造者が薬品名や効能、効果などを薬の容器に表記するときの基準であり、患者にとってはどの薬を選ぶかの目安ともなっている。
 この「手引き」は現在も用いられているが、すでに作成されてから30年ほど経過。生活環境の変化や急激な人口の高齢化に伴う疾病構造の変化などに伴い、社会のニーズに対応しきれなくなっている面もある。業界団体などからも「表現が難解」、「種類が足りない」などの声が挙がっていた。
 今回の改正は、漢方薬処方の「ものさし」を用いて、その使用基準をこれまで以上に明確にしようというもの。1.収載する漢方薬を210種類から約350 種類に増やし、各人の体質などによる適切な使用基準を明確化すること。2.効能・効果を現代に即したものに変更・追加すること。3.漢方処方中の生薬の分量(配合量、満量に対する比率)やエキス抽出溶媒の表示を分かりやすいものへ改善すること、という3つの観点から進め、年内の原案作成を目指している。
 改正案を作成する研究班の一員が、国内の和漢薬研究の第一人者である、富山医科薬科大学大学院の寺澤捷年教授(21世紀COE(卓越した研究拠点)プログラム担当)。漢方医学では、顔色や発熱などの症状から「陰」、「陽」、「虚」、「実」など、漢方医学独特の「ものさし」で病態を見分けている。そして、患者それぞれの症状や体質などに応じて漢方処方することを「証」と呼んで重視している。寺澤教授は、これまでの研究成果を生かし、350種類の薬すべてについて、「赤ら顔」「汗が出る」など「証」の基準となる症状と、薬を飲むべき人と飲むべきでない人の特徴の表記という、重責を担うこととなっている。


●製薬業の活性化へつなげる

 富山医科薬科大学は、“薬の富山”の伝統をバックボーンに「西洋医学と東洋医学の融合」と「医学と薬学の有機的な連携」を建学の理念として掲げる世界で唯一の大学。和漢診療部や和漢薬研究所などがあり、これまで漢方薬の研究が推進されてきた。長年の研究成果が今回の改正案の作成に役立つことになるわけだ。
 寺澤教授は、「多くの漢方薬がこれまで以上に適切に処方されることになります。また収載される漢方薬が350種類に拡大することで社会のニーズに対応が可能となり、製薬業界の活性化にもつながります。富山の配置薬業界にとっても吉報となるでしょう。薬の開発に役立ててほしいですね」と話している。




問い合わせ
●富山医科薬科大学
TEL.076-434-2281

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