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2004年 11月 2日 [ トピックス ]

No.168-2:“薬のとやま”の研究成果が世界へ! 漢方の生薬を使ってがん細胞の転移を抑制


 富山県薬事研究所薬剤薬理研究課の小笠原勝研究員(薬学博士)は、漢方の生薬「呉茱萸(ごしゅゆ)」の主成分「エボジアミン」にがん細胞の転移を抑制する作用があることを突き止め、その研究成果を世界エールリッヒ会議(9月11日、ドイツ・ニュルンベルク)で発表、世界の研究者から注目されている。
 小笠原研究員は、この研究に携わって4年。この間に80種類もの生薬成分を調べた結果、呉茱萸の「エボジアミン」にがん細胞の転移を抑制する作用があることがわかり、動物実験などで実証を重ねてきた。呉茱萸は、ミカン科の落葉小高木。中国原産で、古くから日本でも栽培されている。果実は香気と辛味があり、生薬としては冷え性や婦人病などに用いられてきた。
 同会議は、ノーベル医学・生理学賞を受賞したポール・エールリッヒ博士の生誕150周年を記念し、世界約80カ国から1,000人以上の感染症やがん研究者が参加して開催。会議前にインターネットで小笠原研究員の研究に興味をもった、ドイツ医学・生物・薬学研究所から研究発表の依頼があった。天然の生薬を使ってがんの転移を抑える研究が、高く評価されたようだ。ちなみにエールリッヒ博士は、細菌学・血清学者で、梅毒治療薬など化学療法剤の先駆者としても知られている。

●がん細胞の転移のメカニズムを解明したい

 研究発表後の質疑応答では、「がん細胞のどんなところに効くのか?」、「その作用・メカニズムは?」、「誘導体を使う研究の予定はあるのか?」、「ほかの天然の生薬との併用はあるのか?」などの質問が寄せられ、世界の研究者の天然生薬への関心の高さを、小笠原研究員は肌で感じとったという。
 小笠原研究員は「エボジアミンは、がん細胞を殺す抗がん剤とは異なり、正常細胞へのダメージが少ないのも特徴です。がん細胞の転移のメカニズムや、エボジアミンの作用のメカニズムの解明などを今後進めていきたいですね」と話している。
 県薬事研究所は、有効・安全・安定した薬を求めての医薬品素材・新製剤の開発、天然物やバイオテクノロジー産生物の中から有用な医薬品原料を探索し、企業などへ還元するなど、“薬のとやま”ならではの研究開発を行っている。富山から世界へ。小笠原研究員の研究が成果をおさめ、がんの治療に役に立つことを願いたい。




問い合わせ
●富山県薬事研究所
TEL.0766-56-6026
FAX.0766-56-7285

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