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2005年 4月 6日 [ トピックス ]

No.190-2:円空展開催〜慈愛の微笑みを刻み続けた円空の鮮烈な生涯


●県内から24体が出品

 4月8日(金)〜5月8日(日)、「入定310年 庶民の信仰・慈愛の微笑み〜円空展」が富山県水墨美術館で開催される。
 円空(えんくう)は、江戸時代初期の僧。寛永9年(1632)に美濃に生まれ、飛騨や美濃、尾張、三河を中心に北海道から近畿に至る各地を遍歴し、鉈で彫った神仏像(円空仏と呼ばれる)を多数残している。名古屋市・荒川観音所蔵の『浄海雑記』には、「佛像十二萬躯ヲ刻セリ」と記されており、生涯12万体造像説が伝わっている。全国では現在5,200余体が確認されているが、現存数だけでもこれほど多くの神仏数を彫ったのは、歴史上において円空だけとされる。
 円空仏は数が多いだけでなく、安置されている場所も1,200カ所以上を数える。このうちの約700カ所が民家や、庶民が日常生活で接した小祀堂だ。このことは円空がいかに広く庶民と接していたかの証でもある。
 本展では、常に庶民とともに祈り、慈愛の微笑を刻み続けた円空の鮮烈な生涯を、中・小仏を中心とした約160体を通して紹介する。このうち、新発見の円空仏7体、全国規模の展覧会初出品70余体、旧細入村(4月1日に合併して現在富山市)など、富山県内から出品された24体に注目したい。


●多くの庶民と交流し、庶民のために像を刻んだ円空

 県内では、30体の円空仏が確認されており、そのうちの8割にあたる24体が旧細入村に残されている。猪谷関所館所蔵の「虚空蔵菩薩」、「観音菩薩」、「白山妙理大権現」、「白山金剛童子」、「白山不思儀十万金剛童子」は、昭和47年、廃村となった旧細入村加賀沢集落の鍵のかかっていない白山宮から発見された像で、これを端緒にその後、旧村内から円空仏が発見されたという。「白山妙理大権現」は、白山三山の中心御前峰の主神。円空は白山に対する崇敬が深く、「白山」と背銘のある像は四十四もあり、円空が彫った神像中もっとも多いとされている。旧細入村からは個人所蔵の小さな観音菩薩が多く出品されており、円空がいかに多くの庶民と交流し、庶民のために像を刻んだかをうかがい知ることができる。
 富山市・光厳寺所蔵の「観音菩薩(春日太神)」、「善女龍王(龍天太神)」、「善財童子(白山太神)」は、円空独特の三尊形式で、円空の信仰観を知るうえで貴重な像とされる。善女龍王は、請雨祈願で農民に必要な像であったろう。悟りを得るために53人の善知識を訪ね歩いたとされる善財童子は円空自身を投影させた像といわれる。
 円空が越中に歩を向けたのは、立山登拝が目的で、元禄2年(1689)のこととされる。円空は、岐阜県下呂市にある神明神社に「立山大明神」の背銘をもつ像を残しているが、この像は現された「立山神」としては最古のものとされる。
 この他、飛び出した眼、三角錐を押しつぶしたような大きな鼻をもった「不動明王」(栃木県日光市・清滝寺所蔵)など、円空の代表作に挙げられる像も展示される。春のひととき、円空の世界に触れてみたい。




問い合わせ

●富山県水墨美術館
TEL.076-431-3719
FAX.076-431-3720
http://www.pref.toyama.jp/branches/3044/3044.htm

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