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2004年 2月 11日 [ トピックス ]

No.135-2:世界初の技術を盛り込んだ「細胞チップ」、開発


●免疫機能を活用した診断・治療システムに画期的な進歩をもたらす

 文部科学省の「知的クラスター創成事業」のひとつ、「とやま医薬バイオクラスター」における産学官連携プロジェクトとして、富山県工業技術センターは、免疫機能をつかさどるリンパ球を1個ずつ採取できる「細胞チップ」の開発に世界で初めて成功した。富山医科薬科大学との共同研究によるもので、インフルエンザや新型肺炎(SARS)といった感染症、アレルギーの治療薬開発への活用が期待される。
 開発された細胞チップには、1cm角のシリコン基盤上に、リンパ球とほぼ同じ大きさの直径10ミクロン、深さ15〜20ミクロンの穴が25万個配列されている。超親水性の表面処理技術によって、1つの穴にリンパ球を1つだけ収めることができる。水洗いしてもリンパ球が流れ出にくく、スポイトなどで
取り出しやすいことも特徴だ。また、25万個の穴を番地化し、スキャナーで読み取れるような仕組みにもなっている。病原菌(抗原)に有効なリンパ球を見つけ出すためには、数十万種類あるリンパ球を個々に調べ、特定のリンパ球を回収する必要がある。そのため、リンパ球とほぼ同じ大きさの穴が多数配列され、リンパ球の出し入れが可能な細胞チップの開発が求められていた。世界各国で細胞チップの研究が進められているが、これまでのものは穴の直径が数十ミクロンと大きく、リンパ球が数個も入ってしまうものだった。
 富山県と同大学は昨年9月に共同で特許を出願。今年9月をめどに国際特許も出願する。現在、細胞チップとしての実用性評価と診断システムの研究開発を同大学で行っており、今後はプロジェクトに参加している県内企業に技術移転し、研究機関や医薬品開発企業などへ供給することも検討されている。


●富山オリジナルの薬の開発と新産業の創出をめざして

 2002 年度からスタートした文部科学省の「知的クラスター創成事業」は現在、全国15地域<13クラスター>で実施されている。その実施地域のひとつで富山・高岡地域での「とやま医薬バイオクラスター」には、富山医科薬科大学、富山大学、富山県立大学、北陸先端科学技術大学院大学、県立試験研究機関、県内外の企業が参加している。現在、医薬・バイオの技術と電子・微細加工の技術を融合させた今回のような細胞チップの開発をはじめ、患者の体質に応じた漢方の診断・治療システムの開発、先天性代謝異常症を早期に診断するための酵素チップの開発、超集積・高機能型チップデバイスの開発など、6つのテーマで研究が進められている。
 300年余に及ぶ薬の伝統がある富山。「とやま医薬バイオクラスター」では、このような富山の特徴を生かした研究を進め、長期的には富山オリジナルの新しい漢方薬や抗体医薬の開発などによる新産業の創出をめざしている。

問い合わせ
●(財)富山県新世紀産業機構 プロジェクト推進課
(とやま医薬バイオクラスター事務局)
TEL.076-444-5607

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