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2005年 7月 27日 [ トピックス ]

No.206-1:人間国宝に鋳金家・大澤光民氏(高岡市)決まる!


●鋳型に銅線やステンレス線を埋め込む
 国の重要無形文化財保持者(人間国宝)に、高岡市在住の鋳金家・大澤光民(おおざわこうみん)氏が認定されることになった。大澤氏は、高岡銅器の代表的な技法である「焼型鋳造」に熟練しているだけでなく、「鋳ぐるみ法」と呼ばれる独自の技法を確立したことが高く評価された。県在住者の人間国宝は、平成元年に彫金の故金森映井智氏が選ばれて以来16年ぶり、2人目となる。

 焼型鋳造は、鋳型に溶解した金属を注入する金工技術「鋳金」を代表する技法で、高岡銅器が得意としてきた。複雑な造形作品や大型の銅像などを鋳造できるが、すべての工程に高度な技術が求められる。そして、鋳ぐるみ法は、鋳型に銅線やステンレス線、白銅線などの異質の金属を釘でとめ、あらかじめ埋め込んでおき、そこに溶けた銅合金を流し込み、金属を包み込む技法。冷えて固まった後にヤスリやサンドペーパーなどで表面を磨きあげると、金属の線や点が文様として浮き出てくるのが特徴だ。制作の過程では、鋳型の土くずれ、焼き方、地金の配合、融解温度の加減、異質金属の膨張具合の見極めなどが難しく、長年の経験と勘が頼りとなる。

 大澤氏の作品は、焼型鋳造の高度な技術を受け継ぎながら、そこに鋳ぐるみ法という新技法を加えたところに特色がある。鋳ぐるみ法により、昭和59年に「鋳ぐるみ鋳銅点文花器」で第31回日本伝統工芸展日本工芸会奨励賞、平成12年に「鋳ぐるみ鋳銅花器」で第47回日本伝統工芸展高松宮記念賞などを受賞している。

●銅線の赤は太陽、ステンレスの白は水をイメージ
 大澤氏の工房に飾られた「鋳ぐるみ鋳銅花器」(平成17年、日本伝統工芸富山展特待出品)などの作品群。表面を彩る赤や白、茶色の線と点が独特の模様を織り成している。伝統工芸に現代感覚を生かしたデザインが目に新鮮にうつる。

 鋳ぐるみ法は、鋳型を固定する鉄筋を入れたまま着色所に渡してしまった“失敗”から誕生した技法だ、と大澤氏は語る。本来なら鋳型から外す鉄筋が、着色用の液に浸されて化学反応を起こし、茶色の光を放って浮かび上がった。「異質の金属を鋳型に埋め込むことでおもしろい模様ができる」−−鋳ぐるみの技法を発見した瞬間だった。

 大澤氏は、伝統の技術を受け継ぎながらも時代に合った感覚や、美しい自然をみずみずしくとらえる感性を大事にしている。「銅線の赤は太陽、ステンレスの白は水をイメージしています。朝日や夕日の美しい景観、太陽と水が生み出す生命の不思議な造形にいつも感心させられます。同じ畑、土で育っても花や野菜の色や形はさまざま。そんな自然の妙や素晴らしさ、人間愛、温もりなどを伝えられれば」と大澤氏は作品を見つめる。「初心にかえり、たゆまず精進。謙虚でありながらも一生懸命に仕事に向かっていきたいですね」。

 約400年の歴史を持ち、日本一のシェアを誇る高岡銅器だが、販売面での落ち込みや若手の育成など課題も多い。人間国宝誕生をきっかけに、ものづくりのまち高岡に新しい息吹が吹き込まれることを期待したい。




問い合わせ
●富山県教育委員会文化財課
TEL.076-444-3456
FAX.076-444-4438
http://www.pref.toyama.jp/cms_sec/3007/index.html

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