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2020年 8月 5日 [ イベント ]

No.965:「国際アンデルセン賞受賞記念展 角野栄子の魔女」開催中

高志の国文学館で「国際アンデルセン賞受賞記念展 角野栄子の魔女」が開幕した<2020年9月13日(日)まで>。角野氏の豊かな想像力とユーモアに支えられた多彩な作品群を紹介する記念展となっている。また、同文学館から『家持を伝える -歌い継がれ、語り継がれる越中の家持』が発行された話題についてもお伝えしよう。

●物語をなんとか楽しいものにしたい


▲「魔女の宅急便」の
挿絵原画が並ぶコーナー(左)
▲「アッチ・コッチ・ソッチの
小さなおばけシリーズ」の関連展示(右)


▲箒にまたがって記念撮影も(左)
▲キキの部屋を再現(中央)
▲世界各地の魔女の人形(右)

 “心配なんてしてないわ。心配はおきたときにすればいいのよ。今は、贈りもののふたをあけるときみたいにわくわくしているわ”-作家・翻訳家、角野栄子氏の代表作『魔女の宅急便』の主人公、キキの言葉を記したタペストリーが迎えてくれる記念展「角野栄子の魔女」の展示室。「第1章 魔女の世界」「第2章 おばけの世界」「第3章 角野栄子 創作のひみつ」の3つのゾーンに分けて、角野氏の創作の世界を紹介する。

 「魔女の宅急便シリーズ」は、「誰でも魔法をひとつは持っている」との思いを込め、角野氏が1985年から24年にわたり書き続けた作品。主人公の魔女、キキの成長を描きながら、さまざまな人々との出会いの中で微妙に揺れ動く心情を鮮やかに映し出した世界は、読者に大きな感動を与えている。また、1979年の『スパゲッティがたべたいよう』を皮切りとする「アッチ・コッチ・ソッチの小さなおばけシリーズ」は現在も刊行が続き、42作を数える人気シリーズとなっている。2018年には「アッチ・コッチ・ソッチの小さなおばけシリーズ」で「国際アンデルセン賞・作家賞」を、まど・みちお氏、上橋菜穂子氏に続く日本人3人目として受賞。「物語をなんとか楽しいものにしたい」と80歳を超えてなお創作意欲は盛んで、作品は子どもだけではなく、幅広い世代から親しまれている。

 展示室の「第1章 魔女の世界」では、『魔女の宅急便』の創作の原点となった12歳の娘さんが描いた1枚のイラストを展示。月夜を飛ぶ魔女の箒の柄には音符の吹き出るラジオ、箒の房は三つ編みでリボン付きと、恐ろしい雰囲気をまとった魔女とはイメージが違ったイラストで、「こういう魔女っておもしろいなあ、この子を書きたいな」と角野氏は連載を始めたという。

 圧巻は、キキの住むコリコの町のイメージマップ。高岡市出身の画家、佐竹美保氏の作で、どことなく富山湾や沿岸の町並みに似ている。このほか、絵本『魔女からの手紙』の原画から和田誠氏や黒井健氏ら絵本画家11人の描く魔女がずらり。見比べてみよう。

 「第2章 おばけの世界」では、「アッチ・コッチ・ソッチの小さなおばけシリーズ」の世界を中心に紹介。作品に登場するお日さま色のスパゲッティ、もりもりパンケーキ、いもむしグラタンなどのおばけ料理の食玩などが目を引く。

 「第3章 角野栄子 創作のひみつ」では、貴重な手書き原稿や取材時のノート、黒革の手帖、角野氏が世界各地を旅して集めた魔女の人形などを展示する。『魔女の宅急便』草稿は、キキの家族や旅立ちの前後などが加筆訂正されており、創作の秘密をのぞき見したような気分に。年譜では、1959年、自費移民としてブラジルに渡り、サンパウロで2年間暮らしたことが分かる。この体験をもとに書いた『ルイジンニョ少年 ブラジルをたずねて』が作家としてのデビュー作になった。

 高志の国文学館では、「夏休み、多くの子どもたちに見て、これをきっかけに読書に興味を持ってほしいと思います。魔女宛の手紙やおばけ料理のイラストなどの作品を募集しています。会場内のポストからご応募いただいた方には特製ポストカードをプレゼントします。また、文学館併設のフレンチの店、シェ・ヨシとタイアップし、作品にちなんだテイクアウトメニューを提供します」と話している。

●家持の歌が和歌の世界でどのように受け継がれたか


▲『家持を伝える 歌い継がれ、
語り継がれる越中の家持』

 『家持を伝える 歌い継がれ、語り継がれる越中の家持』中西進監修、高志の国文学館編、北日本新聞社、2020年、A5判、328頁、1,800円+税)は2018年の大伴家持生誕1300年を記念して企画、発行された。大伴家持は、奈良時代の歌人・官人であり、『万葉集』の編纂に深く関わった。また、天平18年(746)、国守として越中に赴任し、5年間を過ごしたことから富山県とはゆかりが深い。

 本書は、家持の歌が和歌の世界でどのように受け継がれたかを示すとともに、富山をはじめ北陸に残る家持の伝承を一覧する、新しい資料集。家持の歌は『万葉集』にのみ記録されたが、後世の文献に何度も現れており、『万葉集』とともに姿を消したわけではない。時代も国境も超えて共感され得る心や、異境越中の風土を表し、遺したからだ。

 第一章「詠み伝えられる家持ー古典和歌における享受」では、大伴家持が越中赴任中の5年間に詠んだ歌223首と、これを引用したと認められる後世の文献に収載された家持歌を挙げる。第二章「語り伝えられる家持ー地方における伝承」では、布勢の円山や放生津八幡宮、寺井の跡(勝興寺内)など富山県、石川県、新潟県の各地に伝わる大伴家持の伝承や、それにまつわる遺跡について紹介。それぞれの解説に加え、おおよその位置図を掲載している。

 監修は、万葉集研究の第一人者であり、高志の国文学館の館長でもある中西進氏。「万葉集の歌その後」と題した中西氏のコラム6本を収載しており、万葉の歌心を伝える。

 高志の国文学館のミュージアムショップや県内の各書店などで販売中!

問合せ
「国際アンデルセン賞受賞記念展 角野栄子の魔女」、『家持を伝える -歌い継がれ、語り継がれる越中の家持』について
●高志の国文学館
TEL.076-431-5492
FAX.076-431-5490
http://www.koshibun.jp/

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