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2019年 8月 28日 [ トピックス ]

No.922:日本美術をデザインの視点から俯瞰 企画展「日本の美 美術×デザイン」

富山県美術館では、『「日本の美 美術×デザイン」―琳派、浮世絵版画から現代へ』を開催中<2019年10月20日(日)まで>。本展出品作家・山本太郎氏と狂言師・茂山千之丞氏らとの鼎談、グラフィックデザイナー・佐藤卓氏スペシャルトークなど多彩なイベントも楽しみだ。芸術の秋の始まりは富山県美術館から。

●作品から装飾性を感じてみよう


▲第4章「近現代日本美術の装飾美」、
福井江太郎作『曄』


▲第1章「琳派と近世江戸の
美を中心に」(左)
▲第2章「浮世絵版画のデザイン力」(右)

 本展では、日本美術にみる装飾性・デザイン性に着目し、琳派、浮世絵版画から現代絵画、ポスターまで、その多様な美の様相を5章立てで紹介。前期<~9月16日(月・祝)>と後期<9月21日(土)~10月20日(日)>で複数回展示替えを行い、計265点を展示する。展示作品リストは富山県美術館ホームページで確認できる。

 日本美術の特徴の一つに、色彩や金銀による「かざりの美」、斬新な表現と大胆な構図による「装飾性」が挙げられる。第1章「琳派と近世江戸の美を中心に」――俵屋宗達の『伊勢物語図色紙「大淀」』は、伊勢物語の「大淀」の場面をやまと絵風に描いた作品。宗達は、金銀泥絵により書と絵の融合の美を確立した。

 江戸琳派の祖、酒井抱一の『四季花鳥図』は金砂子の霞のグラデーションが印象的な二曲一双の屏風。右隻に春の梅、鴬、夏の燕子花など、左隻に秋の半月、女郎花、冬の雪をかぶった藪柑子と雀などを格調高く描いている。

 江戸琳派に影響を与えた奇想の画家、伊藤若沖による拓版画の代表作『玄圃瑶華』では、白黒のコントラストを最大限に生かし、闇に浮かぶシルエットのように植物や生きものたちが浮かび上がる。若沖のユニークな発想と圧倒的なデザイン力が目を引く。

 第2章「浮世絵版画のデザイン力」では、日本のグラフィックデザインのルーツともいえる浮世絵版画約130点を前後期で展示。荒れ狂う巨大な波の向こうに富士山が鎮座する、葛飾北斎の『冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏』、急に降り出した雨を2種類の墨線で表現した、歌川広重の『名所江戸百景 大はしあたけの夕立』などの優品が並ぶ。

●心地よいリズムと装飾的な構成

 第4章「近現代日本美術の装飾美」では、横山大観の『春秋』と加山又造の『群鶴図』が圧巻。『春秋』は枝垂桜や楓などのモチーフを装飾的に描いた作品。『群鶴図』では、プラチナ箔の地に、頭頂の赤い丹頂鶴が並ぶ。頭の向きと形を統一することで心地よいリズムと装飾的な構成を生み出している。

 現代日本画壇で活躍する福井江太郎氏の駝鳥の作品群は、愛嬌のある顔に動感のある長い首が印象的。金箔の地に赤と青のバラを描いた『曄』は、デフォルメされた大小のバラの周囲に描かれた墨の飛沫が躍動感を与えている。大胆な構図と明解な色彩からなる作品、豪奢な作風は琳派の影響を感じさせる。


▲山本太郎作『狂言花子用
素襖三世茂山千之丞ver.』(左)
▲山本太郎作『清涼飲料水紋図屏風』(右)

 平成琳派として知られる山本太郎氏の『清涼飲料水紋図屏風』はコーラ缶のデザインを紅白の光琳模様に見立てたパロディ―的な画風が目を引く。

●芸術の秋のスペシャルトーク

 会期中のイベントも楽しみだ。「茂山千五郎・茂山千之丞と山本太郎によるトークセッション」<9月21日(土)14:00~>は、本展出品作家の山本太郎氏と、同氏に素襖(装束)の絵を依頼した狂言師・茂山千五郎氏と茂山千之丞氏による鼎談。日本画家と狂言師という立場から伝統と現代について語る。

 「佐藤卓氏スペシャルトーク」<10月6日(日)14:00~>では、日本を代表するグラフィックデザイナーで、県美術館の「オノマトペの屋上」を監修した佐藤卓氏が本展の作品にみられるデザインマインドについて語る。

 「安村敏信氏スペシャルトーク」<10月13日(日)14:00~>では、富山県出身の日本美術史研究家、安村敏信氏が江戸絵画の世界をわかりやすく紹介する。

 いずれのイベントも定員100名で、当日先着順。「日本の美」展の観覧券が必要。


▲体感!ザパーンドプーン北斎

 展示室3では、NHK Eテレ番組『びじゅチューン!』と県美術館がタッグを組んだ「びじゅチューン!×TAD なりきり美術館」も開催中。「日本の美」展にちなみ、浮世絵師の体験コーナーと、北斎のビッグウエーブをモチーフにした「体感!ザパーンドプーン北斎」を設けている。体験コーナーでは、広重の『名所江戸百景 大はしあたけの夕立』をもとにした台紙にスタンプを押して自分なりの雨を降らせてみよう。「体感!ザパーンドプーン北斎」では、マイクの前で「ふじさーん」と叫ぶと、声の大きさで波の絵の大きさが変化する。親子連れで気軽に美術に触れられるユニークな企画だ。

 富山県美術館では、「日本の美展では、日本美術をデザインの視点から俯瞰します。明治以降、西洋から『デザイン』という概念が入ると、美術とデザインは区別されるようになりますが、日本美術の装飾性はさまざまな分野に受け継がれていきます。その流れをご鑑賞ください」と話している。

問合せ
●富山県美術館
TEL.076-431—2711
FAX.076-431—2712
https://tad-toyama.jp/

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