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2019年 5月 29日 [ イベント ]

No.909:宮沢賢治の童話世界、探求の旅へ

高志の国文学館(富山市舟橋南町)で企画展「宮沢賢治 童話への旅」が開幕した<2019年7月15日(月・祝)まで>。賢治の童話の舞台を写真パネルや絵本原画、映像などを交えて紹介。自筆の「雨ニモマケズ」手帳は北陸初公開となる。賢治の作品世界を情感豊かに表現する朗読&音楽コンサートなど関連イベントにも参加してみてはいかが。

●「雨ニモマケズ」手帳の実物、北陸初公開

 岩手県花巻市に生まれた宮沢賢治(1896―1933)は、『銀河鉄道の夜』や『セロ弾きのゴーシュ』、『風の又三郎』などの童話、『永訣の朝』、『無声慟哭』、『松の針』の詩など、数多くの作品を残している。自然との交感に満ちたみずみずしさ、想像力に溢れる宇宙的な広がり、オノマトペを用いたリズム感のある文体など、賢治作品は独特の輝きを放ち、子どもから大人まで幅広い年代に愛されている。

 本展は、豊かな自然とそこに生きる人間との関わりに触れた作品を紹介する第一章「賢治と自然からの贈りもの」、オノマトペ(ものの音や声などをまねた擬音語、擬声語)の特徴が表れている作品を紹介する第二章「賢治のオノマトペ」、賢治の幻想や心象の世界が表現された『銀河鉄道の夜』を紹介する第三章「賢治の幻想世界」、人間社会の現実を描いた作品や、理想との狭間で苦悩する作品を紹介する第四章「賢治の理想と現実」で構成されている。


▲宮沢賢治
<写真提供:104128_05.jpg>(左)
▲賢治の代表作14作品を
絵本原画70点でたどる(右)

 『セロ弾きのゴーシュ』、『ざしき童子(ぼっこ)のはなし』など代表作15作品のあらすじと鑑賞のポイントが岩手県在住の写真家、瀬川強氏の38点の写真とともにクローズアップされており、野生動物や野鳥、紅葉、雪原などの写真が静謐な空間に彩りを添える。また、14作品を絵本原画約70点で紹介。東逸子氏(画:『銀河鉄道の夜』)、伊勢英子氏(画:『風の又三郎』、『ざしき童子のはなし』)、柚木沙弥郎氏(画:雨ニモマケズ)など絵本作家ならではの多様な表現を通して、賢治の童話の世界、自然の息吹、生きることの意味などに触れられる。第三章「賢治の幻想世界」では、『銀河鉄道の夜』の世界を映像と音楽、光を交えて演出。展示室内でプラネタリウムのような幻想的な星空を楽しめる。


▲「雨ニモマケズ」手帳
<写真提供:104128_05.jpg>(左)
▲『雨ニモマケズ』のコーナー(右)

 特筆すべきは、「雨ニモマケズ」手帳ほかの実物の展示(※手帳は6月8日以降は複製展示)。直筆で「雨二モマケズ 風ニモマケズ 雪ニモ夏ノ暑サニモ マケヌ 丈夫ナカラダヲモチ…」と書かれた手帳を見ることができる。弟の清六氏が賢治の遺品を整理中に発見した手帳で、晩年の思索的な内面を知る手がかりとなるものだ。北陸では初公開となるので、この機会をお見逃しなく!また、賢治が収集に熱中していた黒曜石や孔雀石、紫水晶などの鉱物の資料や家族との写真、賢治の手による絵「月夜のでんしんばしら」(6月7日まで実物展示、以降は複製展示)、「日輪と山」(6月8日~17日は実物展示、以外は複製展示)、「ミミズクの絵」(7月3日~15日は実物展示、以外は複製展示)、両親に宛てた書簡、亡くなる前日に半紙に墨で書きつけた絶筆二首なども展示されており、賢治の半生に触れられる。


▲宮沢賢治絵童話集13『銀河鉄道の夜』
(くもん出版)(左)
▲『セロ弾きのゴーシュ』(ミキハウス)(右)

 会場には作品中のフレーズを記したタペストリーが下がる。「『けれでもほんとうのさいわいは一体何だろう。』ジョバンニが云いました」(『銀河鉄道の夜』より)、「どっどど どどうど どどうど どどう 青いくるみも吹きとばせ すっぱいかりんも吹きとばせ どっどど どどうど どどうど どどう」(『風の又三郎』より)などのフレーズが印象的だ。

●関連イベントにもぜひ参加を

 6月8日(土)には関連講演がある。テーマは「宮澤賢治のオノマトペの世界」<講師:田守育啓氏(兵庫県立大学名誉教授)>。6月16日(日)の関連講座①のテーマは「宮沢賢治の童話から地球の歴史や営みを探る」<講師:佐野晋一氏(富山大学都市デザイン学部教授 ※定員に達したため、申込み受付は終了)>。6月22日(土)の関連講座②のテーマは「宮沢賢治の世界~不思議な感性の魅力~」<講師:ソコロワ山下聖美氏(日本大学藝術学部教授)>。朗読&音楽コンサート<6月30日(日)>や賢治の絵本読み語り<6月23日(日)>、アニメ作品特別上映会<6月15日(土)、7月6日(土)>なども楽しみだ。申込み方法などの詳細は、高志の国文学館ホームページにアクセスを。

 なお、高志の国文学館では、今年度から企画展で使用したパネルなどを県内の小中学校に貸し出す教育普及事業(移動文学館事業)をスタートさせた。教材として活用してもらい、児童・生徒にふるさとへの思い、企画への理解を深めてもらうことがねらいだ。

 高志の国文学館では、「大人はもちろん、子どもたちにも賢治の世界に触れてほしいです。いろんな絵本作家が賢治の童話を絵本にしています。絵や作風の違いを楽しんでほしいですね」と話している。


問合せ
●高志の国文学館
TEL.076-431-5492
FAX.076-431-5490
http://www.koshibun.jp/

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