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2018年 12月 5日 [ イベント ]

No.885:明治工芸と現代アートの超絶技巧、対決!

富山県水墨美術館(富山市五福)では、2018年11月16日(金)から企画展「驚異の超絶技巧! 明治工芸から現代アートへ」を好評開催中<12月24日(月・振休)まで>。明治時代の工人と現代作家の作品が競うように並ぶ。華麗で精緻な技の世界にふれてみてはいかがだろう。併せて、富山県内の冬の観光情報も紹介しよう。

●明治工芸の再評価が高まるなかでの企画展


▲写真1:安藤緑山「胡瓜」(左)
▲写真2:前原冬樹「一刻:皿に秋刀魚」
(2014年)(中央)
▲写真3:企画展「驚異の超絶技巧! 
明治工芸から現代アートへ」の会場(右)

 企画展「驚異の超絶技巧! 明治工芸から現代アートへ」は、2015年に同館で開かれ好評を博した「超絶技巧! 明治工芸の粋」展の第2弾。会場は、「七宝」、「金工」、「漆工」、「木彫・牙彫」、「自在」、「陶磁」、「刺繍絵画」、「現代作家」の各ジャンルに分かれており、明治時代の工芸品94点、現代アート47点の計141点が鑑賞できる。明治工芸は、京都の清水(きよみず)三年坂美術館のコレクションを中心に構成。細かな装飾が施された明治工芸と、現代作家の作品が競うように展示されている。

 作品をいくつか紹介しよう。明治末期から大正時代にかけて活躍した象牙の牙彫師(げちょうし)、安藤緑山の「胡瓜」(写真1)は、表皮のイボ、細い蔓、細脈の走る緑の葉、黄色の花と、畑から収穫してきたばかりの胡瓜と見間違えるほどのリアルさ。近年、X線透過撮影で、精緻な彫刻を施した象牙のパーツを金属のネジや棒で接合して組み立てているのがわかった。同じく安藤の「松茸、しめじ」は松茸の笠や裏の細かなひだが真に迫っている。「葡萄」は葉のついた採れたての葡萄を表現。「ブルーム」と呼ばれる白い粉が付着した実が印象的。透き通るような質感で、本物の葡萄のようだ。象牙の彫刻で野菜や果物を精巧に再現した安藤の優れた彫技、卓越した彩色の技を存分に鑑賞したい。


▲写真4:並河靖之「蝶に花の丸唐草文花瓶」
(清水三年坂美術館蔵)(左)
▲写真5:宗金堂「象嵌銅香炉」
(清水三年坂美術館蔵)(右)

 明治期の七宝界を牽引した並河靖之の七宝「蝶に花の丸唐草文花瓶」(写真4)は高さ16cmの花器に、菊や燕子花などの小さな花や蝶をあしらった作品。細いリボン状の金属を器に貼り、文様の輪郭線を作り、釉薬をさして窯で焼き付ける有線七宝の名手、並河の斬新な色彩感覚とデザインに誰もが魅了されることだろう。

 宗金堂(宗金銅器工場で作られた製品のブランド)による「象嵌銅香炉」(写真5)は高さ82cmの大香炉。金や銀、赤銅といった金属の象嵌色絵が圧巻だ。猿、蛇、鳳凰といった動物たちも目を引く。宗金堂の金森宗七は明治の廃藩置県で失職した金工職人を富山県・高岡に招き、明治政府の殖産興業政策に合致した銅製の花瓶や香炉など海外向けの貿易品を製造。「象嵌銅香炉」は欧米で開催された万国博覧会へ出品するために作られたものではないかと推察される。精緻な技にふれてみたい。

●超絶技巧の遺伝子を受け継ぐ現代作家


▲写真6:髙橋賢悟
「flower funeral:cattle」(2017年)(左)
▲写真7:山口英紀
「右心房左心室」(2008年)(右)

 現代アートには15人のアーティストが参加している。前原冬樹氏の「一刻:皿に秋刀魚」(写真2)は、一見すると、白い皿の上に食べかけの秋刀魚を彫り出したものを置いたと思われるが、実は一木造りの木彫作品。皿と秋刀魚は一体だ。前原氏はプロボクサー、サラリーマンを経験した後、32歳で東京藝術大学油画科に入学した異色の経歴をもつ。

 髙橋賢悟氏の「flower funeral:cattle」(写真6)は、植物を採取して型どり、そこにアルミニウムを流し込んで作った作品。小さな草花は実物大で、生き物の頭蓋骨の形を成形した。生と死が表現されているようだ。

 山口英紀氏の水墨画「右心房左心室」(写真7)は、モノクロ写真と見間違うほどの繊細な描写が印象的。写真のヴィジュアルと絹、墨、筆が融合した新しい水墨画といえる。左右を反転させて、対の画面にした作品だが、よく見ると図版の右だけに車が走っている。

 なお、関連行事として、12月8日(土)16:00~18:00には、「美術館deインスタ映え!」を開催。会場内の作品を自由に撮影できる。企画展の思い出に、作品とのツーショットなどをインスタグラムにアップしてみてはいかがだろう。

 県水墨美術館では、「明治維新で武士階級が消滅し、刀装金工らの匠たちは生活の糧を失うことになりますが、殖産興業政策を推し進める明治政府の指導のもと、武具甲冑の象嵌装飾など、それまでに培った高い技術で精緻な金工製品などを作るようになります。主に輸出用としてつくられた工芸作品が海外から里帰りし、明治工芸の再評価が高まるなかでの企画展。現代作家については、先人たちの超絶技巧の遺伝子を受け継ぐ作家たちをクローズアップしました。ぜひ作品をご鑑賞ください」と話している。

●寒ブリの季節到来! 冬の花火も心に刻んで


▲第7回ひみぶりフェア

 芸術鑑賞とともに、富山の冬の味覚も堪能してみてはいかがだろう。冬の訪れとともに、富山湾の味覚の王者「寒ブリ」の漁が始まり、魚都・氷見では12月1日に「ひみ寒ぶり宣言」が出された。ちょうどこの日から「第7回ひみぶりフェア」が開幕した<2019年2月28日(木)まで ※ブリがなくなり次第終了>。市内の民宿や割烹、寿司店など約30店舗の参加店で、ブリの刺身、ブリしゃぶ、ブリ大根など各店自慢のブリ料理が味わえる。2019年1月20日(日)、ひみ番屋街では「ぶり・鰤・ブリづくし」を開催。ブリの解体ショーや刺身のふるまい、ブリかす汁の限定販売などがある。

 清澄な大気のもと、冬の夜空を彩る花火はひときわ美しい。「環水公園スイートクリスマス2018」が12月22日(土)、富岩運河環水公園(富山市湊入船町)で開催される。同公園では、「環水公園スイートイルミネーション2018」を実施中<2019年2月24日(日)まで>。空に打ち上がる花火と、運河の水面に映るイルミネーションの共演が楽しみだ。湯煙と温泉が恋しい季節。県内最大の温泉地、宇奈月温泉では、「宇奈月温泉冬物語・雪上花火大会」が2019年1月5日(土)~4月13日(土)の毎週土曜に開催される。黒部峡谷に響き渡る花火の音も迫力満点。湯浴みとともに満喫しよう。


問合せ
企画展「驚異の超絶技巧! 明治工芸から現代アートへ」について
●富山県水墨美術館
TEL.076-431-3719
FAX.076-431-3720
http://www.pref.toyama.jp/branches/3044/3044.htm

「第7回ひみぶりフェア」について
●ひみぶりフェア実行委員会<(一社)氷見市観光協会>
TEL.0766-74-5250
FAX.0766-74-8104
http://www.kitokitohimi.com/

「環水公園スイートクリスマス2018」&「環水公園スイートイルミネーション2018」について
●富岩運河環水公園
TEL.076-444-6041(環水公園パークセンター)、076-444-4116(富山県観光振興室)
http://www.kansui-park.com/

「宇奈月温泉冬物語・雪上花火大会」について
●宇奈月温泉旅館協同組合
TEL.0765-62-1021
http://www.unazuki-onsen.com/


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