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2018年 6月 20日 [ イベント ]

No.861:美術ファン必見!「高野山金剛峯寺 襖絵完成記念 千住博展」 全国初公開、障壁画(襖絵、床の間)44面

 2018年6月9日(土)から、富山県美術館で「高野山金剛峯寺 襖絵完成記念 千住博展」が開かれている。世界遺産・高野山金剛峯寺(こんごうぶじ)に奉納する障壁画(襖絵、床の間)44面を全国に先駆けて富山で初公開。このほか、水の流れに色を付けた《フォーリングカラー》(2005年)など約30点を展示。日本画の新しい可能性を模索してきた千住博氏の40余年にわたる創作の軌跡をたどる。会期は7月29日(日)まで。

●すべての力を振り絞って描かれた《瀧図》、《断崖図》

 千住博氏はアメリカ・ニューヨークに制作拠点を置いて活動する現代日本画壇の代表作家。1995年ヴェネツィア・ビアンナーレに、流れ落ちる滝を描いた《ザ・フォール》を出品し、東洋人初の名誉賞を受賞した。駅や空港のアートディレクションを手がけるなど、日本画の枠にとどまらない自由な発想と表現で国内外から高い評価を受けてきた。

 2015年に真言密教の聖地、高野山の総本山である金剛峯寺(和歌山)の依頼を受け、《瀧図》、《断崖図》からなる障壁画(襖絵、床の間)を約3年かけて制作。2020年に金剛峯寺に奉納する前に、全国を巡回展示することになった。その最初の会場が富山県美術館。昨年夏の全面開館以来、さまざまなアートシーンを提供してきた県美術館だが、初めて一人の作家にスポットを当てた展覧会となる。これは同美術館が前身となる県立近代美術館の時代から千住博氏の作品を保有しており、同氏も「富山はコレクターも多く、最新作を初公開する場所にふさわしい」と語っていることなどから実現した企画。6月8日に開会式があり、式後に千住氏による作品解説が行われた。


▲6月8日の開会式後、初公開の
高野山金剛峯寺「茶の間」
《断崖図》(2018年)の作品を解説(左)
▲初公開された高野山金剛峯寺
「囲炉裏の間」《瀧図》(一部)
(2018年)(右)

 襖絵と床の間からなる障壁画は44面からなる幅40m超の大作。全長25mを超える《瀧図》は金剛峯寺の「囲炉裏の間」に、全長16mを超える《断崖図》は「茶の間」に納められる。

 千住氏は100年後、200年後、1000年先まで残る絵を意識し、修復家が扱いやすいように、褪色しにくい岩絵の具や定着用の膠(にかわ)、和紙(雲肌麻紙)など、日本ならではの天然画材にこだわった。膠には美大生などが最初に習う基本の「三千本膠」を用いた。

 《瀧図》では、岩絵の具の焼群青(ブルーグレーの部分)を画面に均一に塗り、天然膠をひき、紙の上から水を流した直後に白い胡粉を垂らした。滝の水面や飛沫は筆やエアスプレーを用いて描いた。「悩みを抱えて高野山を訪れる人に寄り添うような作品を目指した」と、千住氏は解説する。金剛峯寺に納められると、高さがあるため、《瀧図》の一部が壁に隠れるという。すべてを見渡せるのもこの展覧会の大きな魅力だ。

 《断崖図》の制作では、山や谷の立体感をイメージしながら、和紙をくしゃくしゃに揉んでしわを付ける独自の技法“平面の彫刻”を編み出した。その後、和紙を丁寧に整えてパネルに貼り付け、胡粉(白色部分)や、岩絵の具の焼群青(黒色部分)を塗った。和紙のしわが崖のごつごつとした岩を表現。この技法は、アトリエの床に落ちていた傷の付いた和紙を見たことがきっかけだったという。

 千住氏は、「襖絵を描いているときに60歳の還暦を迎えました。絵を描き始めてから40年経ち、また振り出しに戻ったという感じ。清々しい心境で、初心に戻ることができました。滝は静かな滝に、崖は崖らしくイメージどおりに。全エネルギーを注ぎ込んで仕上げた。自分にとって記念碑的存在になりました」と語っている。

●壮大な滝、暗闇の中で青白く光る

 企画展では、障壁画(襖絵、床の間)のほか、1980年から2018年までに制作された約30点を展示。展示作品の一部を紹介しよう。《龍神Ⅰ、Ⅱ》(2014年)はアクリル絵の具と蛍光塗料を用いた屏風作品(いずれも六曲一双屏風)で、明るいところでは白い滝だが、真っ暗な中でブラックライトを当てると、青白く輝く仕掛けになっている。照明を落とした展示室で見ると、暗闇の中で光る滝は圧巻。ごうごうと流れ落ちる滝の音と涼風が迫ってくるようだ。

 《フォーリングカラー》(2005年)は、滝は本当に白いのかという思いから生まれた。太陽の白い光にはすべての色の光の波長が含まれている。聖性を表すのが白い瀧だとしたら、七色に光る滝は喜びや悲しみ、怒り、不安といった、人間の感情世界に重ねられるという。

 《三春の滝桜》(2013年)は、福島県三春町の“三春滝桜”をモデルにした作品。滝桜は樹齢が1,000年を超えると推定されており、絵では美しいだけでなく、魔的な雰囲気を漂わせている。

 《波の詩》(1998年)は、月の引力で起こる満ち潮、引き潮から宇宙の謎と太古の記憶に迫ったタイドウォーターシリーズの一つ。月光を象徴する金、地球を象徴する青を漆黒と組み合わせて描いている。


▲《龍神Ⅰ、Ⅱ》(2014年)を展示する
展示室3(左)
▲《フォーリングカラー》
(2005年)を解説する千住氏(右)

 富山県美術館では、「高野山金剛峯寺に奉納する障壁画(襖絵、床の間)は、全国に先駆けて富山が初公開となります。6月22日(金)、7月1日(日)、14日(土)、23日(月)の午前11時から学芸員によるギャラリートークを開催します。ぜひご鑑賞ください」と話している。

 なお、企画展「高野山金剛峯寺 襖絵完成記念 千住博展」のチケットを抽選で10名様にプレゼントします。プレゼント応募フォームに、プレゼント内容「富山県美術館」・氏名・郵便番号・住所・メールアドレス・電話番号・記事を読んでのご感想をご記入のうえ、お送りください。<6月24日(日)締切。発表は発送をもって代えさせていただきます。>

→プレゼント応募フォームはこちら

問合せ
●富山県美術館
TEL.076-431-2711
FAX.076-431-2712
http://tad-toyama.jp/

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