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2016年 2月 3日 [ イベント ]

No.742:ノーベル賞受賞の梶田隆章氏に富山県特別栄誉賞! 記念パネル展開催

 富山県は、2015年にノーベル物理学賞を受賞した東京大学宇宙線研究所長の梶田隆章氏に「県民に大きな夢と希望を与えた」として富山県特別栄誉賞を贈った。梶田氏の研究内容や功績などを紹介する記念パネル展を富山県民会館で開催中。ニュートリノ観測装置「スーパーカミオカンデ」に設置されている「光電子増倍管」の実物や、ジュニア向けパネル、ノーベル物理学賞授賞式の写真などを展示している。

●記念パネル展エントランス、ノーベル賞授賞式の会場をイメージ


▲記念パネル展・開会式の
テープカットの様子。
梶田氏は左から4人目(左)
▲光電子増倍管(組立式)(中央)
▲開幕直後の観覧の様子(右)

 平成28年1月17日、富山国際会議場で富山県特別栄誉賞の贈呈式があり、800人の出席者から祝福を受けた梶田隆章氏は「科学、研究、自然の魅力を若い人たちに伝え、成長してもらうことで、富山に協力したい」と語った。富山県特別栄誉賞は、社会の発展に卓絶した功績があり、富山県の振興に大きく寄与され、県民に夢と希望、勇気と感動を与えた人物をたたえる県の最上位の表彰。名誉県民と同等に位置付けられる。富山県特別栄誉賞は、2013年に文化勲章を受章した高志の国文学館の中西進館長以来2人目。

 富山県特別栄誉賞贈呈式に先立ち、「梶田隆章先生ノーベル物理学賞受賞 記念パネル展」開会式が会場の富山県民会館1階ロビーで行われ、梶田氏らがテープカット。このパネル展開催は2月29日(月)まで。(主催:富山県、協力:東京大学宇宙線研究所、富山大学、北日本新聞社)


▲記念パネル展のエントランス

「N」の文字が入った青いカーペット、ノーベル風のメダルを装飾した演台、緑の蔦を絡ませたゲート……記念パネル展のエントランスは、昨年12月10日(日本時間11日未明)にスウェーデン・ストックホルムのコンサートホールで開かれたノーベル賞授賞式の会場をイメージした。授賞の瞬間、高らかに鳴り響いたファンファーレが聞こえてきそうだ。

 ゲートの左手には、柔らかな笑顔で腰に手を当てた梶田氏のほぼ等身大のパネルとサインを飾っている。気軽に腕を組めると、記念撮影する人も。授賞式当日の臨場感を楽しみながらゲートをくぐろう。

 会場には、富山との県境に近い岐阜県飛騨市神岡町・神岡鉱山跡の地下約1,000mにあるニュートリノ観測装置「スーパーカミオカンデ」に設置されている「光電子増倍管」の実物展示をはじめ、梶田氏のプロフィール・人物像、ノーベル物理学賞受賞につながった「素粒子ニュートリノが質量を持つことを示す、ニュートリノ振動の発見」、ニュートリノの研究、重力波の検出を目指して進められている「KAGRA」プロジェクト、ノーベル賞授賞式を報じる新聞記事などを紹介するパネル21枚、スーパーカミオカンデ映像鑑賞コーナーなども設置している。

 梶田氏は1959年、埼玉県に生まれ、埼玉大学理学部卒業後、81年に東京大学大学院の小柴昌俊氏(2002年、ノーベル物理学賞受賞)の研究室に進み、ニュートリノを観測するカミオカンデ(岐阜県飛騨市神岡町)の実験に加わった。その後、カミオカンデの性能を高めた二代目の検出器、スーパーカミオカンデの建設に携わり、ここで研究するため、95年に富山市大沢野地域に移り住み、97年に自宅を構えた。99年東京大学宇宙線研究所教授、同研究所附属宇宙ニュートリノ観測情報融合センター長、2008年同研究所所長に就任。15年文化功労者、文化勲章、ノーベル物理学賞を受け、現在に至る。

 同氏は、地球の大気で生じる「大気ニュートリノ」をスーパーカミオカンデで観測。ニュートリノが別の種類のニュートリノに変身する「振動」という現象を発見し、1998年の国際会議で「ニュートリノ振動の発見」を発表した。振動はニュートリノに質量がある証拠とされ、質量がゼロと考えられてきた従来の理論の定説を覆し、新しい物理への扉を開く、歴史的な成果であった。ニュートリノの質量の発見は、宇宙の成り立ちや構造の解明につながる画期的な研究として、ノーベル物理学賞の受賞につながった。

●世界最大の「光電子増倍管」展示、ニュートリノ解説

 ゲートをくぐるとすぐ目に入るのが、直径20インチ(50.8cm)、重量8kg、世界最大の「光電子増倍管(光センサー)」だ。スーパーカミオカンデの円筒形タンク(高さ41.4m、直径39.3m)の内水槽の壁にはタンクの内向きにこの直径約50cmのものが11,129本、外水槽の壁には外向きに直径約20cmのものが1,885本取り付けられているという。この光センサーは、月面上にある懐中電灯の光を地球上でとらえることができるほど高性能で、素粒子ニュートリノが約5万tの超純水のなかでごくまれに水と衝突したときに発生するリング状のチェレンコフ光を検出する。


▲パネルが並ぶ会場(左)
▲光電子増倍管(右)

 解説パネルを読むと、ニュートリノや梶田氏の研究内容、功績などについて理解を深めることができる。ニュートリノとは、宇宙に存在する最も基本的な粒子の一つで、地球の大気、星の中、ビッグバン、超新星爆発など、さまざまなところで生まれる。質量は電子の100万分の1以下でとても軽い。人の手のひらを1秒間に数兆個以上も通過するなど、どのような物質でもすり抜けて、宇宙の彼方に飛んでいってしまうため、観測が難しく、謎が多いようだ。

●重力波観測ヘ、「KAGRA」プロジェクト紹介

 梶田氏がプロジェクトの代表を務め、人類史上初となる重力波観測に向けて今年度中に試験運転を始める大型低温重力波望遠鏡「かぐら」(飛騨市神岡町)を紹介するパネルの展示もある。同プロジェクトには、東京大学宇宙線研究所と高エネルギー加速器研究機構、自然科学研究機構・国立天文台を中心に、富山大学など国内外の研究機関の研究者が参加している。重力波の検出は「アインシュタインからの最後の宿題」といわれ、超新星爆発やブラックホールの衝突時などに生じる時間や空間の揺れ「重力波」の観測を目指すもので、究極的には宇宙誕生の瞬間まで知ることができる。成功すればノーベル賞級の成果とされる。富山大学は、「かぐら」に最も近い国立大学で、「研究の前線基地」として重要な役割が期待されている。

 ジュニア向けパネルコーナーは、飛騨市神岡町で製作された紙芝居「ニュートリノってな~に?」の脚本と絵の一部をもとに作成した2枚のパネルで構成。スーパーカミオカンデとニュートリノが出会うストーリーを通して、研究内容を子どもたちにも分かりやすいように紹介している。

 映像鑑賞コーナーでは、大型モニターで①「スーパーカミオカンデ 素粒子と宇宙の秘密を探る」(約18分)、②「“重力波とは?” “かぐらが出来るまで” “重力波でなにが分かるのか?”」(約7分)を見ることができる。


▲ジュニア向けパネルコーナー(左)
▲映像鑑賞コーナー(中央)
▲特別写真展(右)

 特別写真展として、「富山の自然を通して 自然の不思議を感じて下さい。それが自然科学への入り口です」と、県民へのメッセージを書いた色紙を手にする梶田氏をはじめ、ノーベルカフェの椅子にサインする姿、ノーベル賞授賞式を終え、メダルを手にする笑顔の梶田氏と妻の美智子さんなど、8点の写真を展示している。

 富山県知事政策局では、「梶田隆章先生の研究内容や功績などをわかりやすく紹介しています。スーパーカミオカンデの前身“カミオカンデ”の地下タンクを造ったのは、県内企業です。富山のものづくり技術が、2002年の小柴昌俊先生のノーベル物理学賞受賞、そして梶田先生の研究に貢献しています。梶田先生の研究を支えた光電子増倍管の実物展示や、先生と腕が組める等身大パネルもあります。ぜひ、記念パネル展を見学してください」と話している。

問合せ
●富山県知事政策局
TEL.076-444-3949
FAX.076-444-3473
http://www.pref.toyama.jp/cms_sec/1002/

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