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2015年 5月 20日 [ トピックス ]

No.707:日本遺産に認定! 高岡市の魅力を発信

 文化庁が創設した「日本遺産」の第1弾に、高岡市の「加賀前田家ゆかりの町民文化が花咲くまち高岡―人、技、心―」が認定された。国宝・瑞龍寺や高岡城跡、高岡御車山(みくるまやま)、金屋町重要伝統的建造物群保存地区など30の有形、無形の文化財で構成されている。今春開館したばかりの高岡御車山会館では、金工や漆工など工芸技術の粋を集めた御車山を通年展示。薫風に誘われて、高岡を散策してみてはいかがだろう。

●文化財版の“クールジャパン”、世界へアピール


▲国宝・瑞龍寺(画像提供:高岡市)(左)
▲山町筋重要伝統的建造物群保存地区(中央)
▲高岡御車山会館(右)

 「日本遺産(Japan Heritage)」は、地域の有形、無形の文化財をパッケージで認定し、クールジャパン推進の一環として世界へ戦略的に発信して地域活性化を図るもの。今回の第1弾には、「灯り舞う半島 能登~熱狂のキリコ祭り」(石川県)、「海と都をつなぐ若狭の往来文化遺産群~御食国若狭と鯖街道~」(福井県)、「日本茶800年の歴史散歩」(京都府)など全国24府県の18件が選ばれた。
 この日本遺産では、歴史的魅力や特色を通じて日本の文化や伝統を物語る「ストーリー」が認定対象となる。単一の市町村内でストーリーが完結する「地域型」、複数の市町村にまたがってストーリーが展開する「シリアル型(ネットワーク型)」があり、高岡市は「地域型」での認定だ。

 高岡市の「加賀前田家ゆかりの町民文化が花咲くまち高岡―人、技、心―」。そのストーリーを紹介すると、「高岡は商工業で発展し、町民によって文化が興り受け継がれてきた都市である。高岡城が廃城となり繁栄が危ぶまれたところで、加賀藩は商工本位の町への転換政策を実施し、浮足立つ町民に活を入れた。鋳物や漆工などの独自生産力を高める一方、穀倉地帯を控え、米などの物資を運ぶ良港を持ち、米や綿、肥料などの取引拠点として、高岡は“加賀藩の台所”と呼ばれるほどの隆盛を極める。町民は、固有の祭礼など、地域にその富を還元し、町民自身が担う文化を形成した。純然たる町民の町として発展し続け、現在でも町割り、街道筋、町並み、生業や伝統行事などに高岡町民の歩みが色濃く残されている」というものだ。


▲高岡城跡(高岡古城公園)(左)
▲菅野家住宅(中央)
▲高岡大仏(右)

 ストーリーを構成するのは、国宝・瑞龍寺や前田利長墓所、高岡城跡(高岡古城公園)、高岡御車山、山町筋重要伝統的建造物群保存地区、菅野家住宅、金屋町重要伝統的建造物群保存地区、銅造阿弥陀如来坐像(高岡大仏)など、30の有形、無形の文化財。市内各所を訪ねながら、高岡の魅力を発見してみてはいかがだろう。

 いくつか紹介しよう。瑞龍寺は、高岡開町の祖・前田利長の菩提を弔うために、加賀前田家三代当主・利常が建立した曹洞宗寺院。典型的な禅宗建築の伽藍配置で、山門、仏殿、法堂が国宝に指定されている。前田利長墓所は、近世大名の個人墓所としては総面積約1万坪と、破格の規模を誇る。瑞龍寺と墓所をつなぐ八丁道も設けられた。高岡城跡は、築城技術が高度に発達した近世初頭の縄張りをほぼ完全な姿で留めており、廃城となった後、本丸の殿閣撤去跡に新しく米塩の倉庫が建てられたことで城跡の荒廃が防がれた。また、城下町から商工の町へと転向する第一歩となった。

 高岡御車山は7基の山車(やま)で構成されており、高岡の金工、漆工の粋を集めた総合作品として高い美術工芸的価値を有する。山町筋重要伝統的建造物群保存地区は、重厚かつ繊細な意匠を持つ土蔵造りの伝統的建造物が建ち並ぶ地区。近世初頭には米商会所が置かれ、綿市場の拠点として高岡の経済的な発展に大きく貢献した。高岡御車山を所有・継承していることから「山町(やまちょう)」と呼ばれている。山町筋の建物の中でも大規模で質の高さが評価されている菅野家住宅は、高岡の隆盛を物語る土蔵造り建物の代表格。代々、綿糸などの卸商を営んできた筏井家住宅は漆壁による防火構造、洋風の構造・意匠を導入した質の高い建造物として貴重な存在だ。

 千本格子と石畳が美しい金屋町重要伝統的建造物群保存地区は、前田利長が産業振興のために鋳物師を招き、鋳物づくりを行わせた高岡鋳物発祥の地。“高岡大仏”と親しまれている銅造阿弥陀如来坐像は高岡銅器職人の献身的な動きと、市民の浄財により開眼供養に至った。

 市郊外の伏木地区にある勝興寺は、戦国期、越中における一向一揆の拠点となり、近世には本願寺や加賀前田家とも関係を強めた古刹。伏木が舟運業で賑わいを見せるなか、その核として存在を示してきた。戸出地区の戸出御旅屋(おたや)の門は、江戸時代初期の御旅屋の面影を残すものとして貴重だ。

 高岡市文化財課では、「400年余りの歴史を誇る高岡の歴史、伝統文化が高く評価された。歴史都市高岡を国内外に発信していきたい」と話している。

●高岡御車山会館オープン! 400年余の伝統文化に触れる


▲高岡御車山祭(画像提供:高岡市)(左)
▲「御車山と染織」のコーナー(中央)
▲制作中の「平成の御車山」(右)

 国重要有形・無形民俗文化財「高岡御車山祭」を紹介する「高岡御車山会館」がオープンした。毎年5月1日の祭で巡行する実際の山車を通年展示する初めての施設だ。高岡御車山は、天正16年(1588)、豊臣秀吉が後陽成(ごようぜい)天皇を聚楽第(じゅらくだい)に迎え奉るときに使用した御所車を、加賀藩祖・前田利家が秀吉から拝領し、利長が慶長14年(1609)、高岡の町民に与え、城下を曳き廻らせたのが始まりとされ、約400年の歴史がある。京都祇園祭、高山祭など、国重要有形・無形民俗文化財の両方の指定を受ける国内5件のうちの1つだ。

 祭当日には、金工・漆工・染織などの技術の粋を尽くした絢爛豪華な山車が山町筋~高岡関野神社を巡行する。日本でも屈指の華やかな山車の一番上に煌くのが、「鉾留(ほこどめ)」と呼ばれる飾り。通町(とおりまち)が鳥兜、御馬出町(おんまだしまち)は胡簶(やなぐい)に弓矢、守山町は五鈷鈴(ごこれい)、木舟町は胡蝶、小馬出町(こんまだしまち)は太鼓に鶏、一番街通は釣鐘、二番町は桐である。

 さて、高岡御車山会館では、7基ある御車山を4カ月交替で、吹き抜けのホール中央に1基ずつ展示。祭で市内を練り回す際の巡行順に、現在1番最初の通町の山車が高さ約10mのガラスケースの中に展示されている。最上部の鳥兜の鉾留がなんとも荘厳なたたずまい。本座には華麗な衣装に包まれた布袋和尚の人形。飾りではなく、神の形式とされる。中央には唐子人形が愛らしい姿を見せている。7基の中でも最多となる5体の唐子が据えられており、実際の祭では、回転棒を握った中央の唐子が巧妙なでんぐり返しを行うという。幔幕には金糸刺繍の梅鉢紋、漆黒の車輪には精緻な金具が施されており、職人の技に魅了される。

 1階には、御車山の構造や特徴、金工、漆工、染織、衣装などを紹介したパネル、古い鉾留、年表、古文書などの展示もあり、見ていくと、祭や御車山への理解も深まる。モーションキャプチャーの技術で体の動きにあわせて車輪を動かすことができる映像体験装置も楽しめる。制作中の「平成の御車山」も主要展示物の1つで、完成部分が順次展示されるというからリピートしたい。

 2階に上がると、通町の山車の最上部の鉾留、花傘、本座が驚くほどの近さで観賞できる。また、からくり人形をボタン操作で動かしたり、お囃子の音色を聞いたりと、体験展示も子どもたちに人気が出そうだ。233インチの大型スクリーンが設置された体感シアターでは、祭の準備から祭礼当日を追体験できる。4Kの超高精細画質で美しいシーンを満喫するとしよう。

 高岡御車山会館では、「高岡御車山祭の臨場感、華やかな時間を体感し、高岡の工芸技術の粋を集めた御車山を観賞できるプレミアムスポット。山町筋にある土蔵造り風の建物が目印。高岡銅器や高岡漆器などの伝統工芸品、クラフトなどを展示販売するギャラリーショップ、自然派カフェも備えている。ぜひお越しを」と話している。

問い合わせ
「日本遺産」認定について
●高岡市教育委員会 文化財課
TEL.0766-20-1453
FAX.0766-20-1667
http://www.city.takaoka.toyama.jp/

「高岡御車山会館」について
●高岡御車山会館
TEL.0766-30-2497
FAX.0766-30-2498
http://mikurumayama-kaikan.jp/

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