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2011年 12月 21日 [ トピックス ]

No.537-1:「浅野酵素活性分子プロジェクト」、ERATO採択


 富山県立大学工学部生物工学科・生物工学研究センターの浅野泰久教授の「酵素活性分子プロジェクト」が、約1,800人の候補の中から科学技術振興機構(JST)の「戦略的創造研究推進事業総括実施型研究」(ERATO:エラトー)に採択された。研究期間は、平成24年度から5年間。微生物や植物、動物が持つ高活性な酵素分子の反応を探求し、有用物質生産や健康診断法などに役立つ手法の基盤創出を目指す。


●富山県立大学の研究レベル、高評価

 富山県立大学工学部生物工学科・生物工学研究センターの浅野泰久教授の「酵素活性分子プロジェクト」が、約1,800人の候補の中から科学技術振興機構(JST)の「戦略的創造研究推進事業総括実施型研究」(ERATO:エラトー)に採択された。

 ERATOは、基礎的な研究から科学技術の発展や新産業につながる革新的な新技術を創出することを目的に、JSTが昭和56年から実施。既存の研究の延長ではなく、新たな視点を盛り込んだ挑戦的な研究を対象にしている。卓越したプロジェクトリーダー(研究総括)を選び、その下に若手研究者が結集し研究に当たる時限プロジェクト制。リーダーはプロジェクトの運営を司る総監督にあたり、研究の構想と計画づくり、研究者の選定・指揮、予算の調整などを担う。これまでに採択されたリーダーには、ノーベル化学賞を受賞した野依良治氏、青色発光ダイオードを開発した中村修二氏ら、世界で活躍する研究者が名を連ねている。

 今年度の選定には、研究者からの他薦やJSTの独自調査で1,817名の第1次候補者が選ばれ、その中から書類・面接選考を経て、浅野教授と、東京大学2人、京都大学2人が選ばれた。地方大学の研究者が選ばれること自体が極めて珍しく、県内の大学などに所属する研究者が選ばれたのは、今回が初めて。浅野教授は平成2年の開学時から県立大学で研究を続けており、県立大学の20年余の取組みが評価されたともいえる。

 今後、国内外から研究者を公募し、来年4月から本格的にスタートするプロジェクトに備える。研究期間は、平成24年度から5年間。総額12億円程度を上限に研究費が交付される。

●酵素を使った健康診断法の開発へ

 日本酒やワイン、チーズ、醬油、ヨーグルトなどの食品は微生物の細胞の中にある酵素の働きを利用して作られてきた。浅野教授は、微生物などから新しい酵素を見つけ、その酵素を触媒として働かせ、アミノ酸や抗生物質といった有用物質を効果的に生産する方法などを研究してきた。酵素を使うと、温和でクリーンな状況下でも化学反応が加速する。これらは“ホワイトバイオテクノロジー”と呼ばれ、環境に優しい化学工業技術の1つとして注目されている。

 「浅野酵素活性分子プロジェクト」は、微生物だけでなく、植物や昆虫が有する酵素反応を探求し、その酵素の機能を利用して有用物質の合成や健康診断法に資する基盤技術の構築を目指している。

 具体的には、生物が有するさまざまな酵素を組み合わせて有用物質を生産するための酵素反応を見い出すことや、少量の血液サンプルで短時間に総合的な病気診断を可能にする「アミノ酸定量システム」の開発などに取り組む。これらの研究により、石油を原料としない有用物質の工業生産技術や生体触媒反応を利用した健康診断法などの創出が期待される。

 富山県は日本海側屈指の産業集積を誇る“ものづくり県”。特に薬都として長い歴史をもち、バイオ医薬分野では全国有数の医薬品産業の集積がある。プロジェクトの世界レベルの研究とその成果が、富山の産業に還元されることに期待が高まる。

 浅野教授は、「微生物の酵素などを用いて、有用物質の合成法を開発し、また血中アミノ酸の分析により、病気の有無を調べる健康診断法の開発など、世界のオンリーワン技術を目指します。ERATOに選ばれたことで、国内外から多くの研究者が県立大学に集まることになります。本学生にはいろんなことを学んでほしい」と話している。




問い合わせ
●富山県立大学事務局教務課
TEL.0766-56-7500
FAX.0766-56-6182
http://www.pu-toyama.ac.jp/

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