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2018年 10月 17日 [ イベント ]

No.878:立山曼荼羅に描かれる称名滝を見るか、本物を先に見るか

落差約350mの日本一の大瀑布、称名滝。富山県[立山博物館](立山町芦峅寺)では、2018年9月11日(火)から秋の立山曼荼羅特別公開展「立山曼荼羅に描かれる称名滝」を開催中。紅葉シーズン、称名滝観望とあわせてぜひ立山博物館へ寄ってみてはいかが。

●滝音を聞きながら絶景を


▲秋の立山曼荼羅特別公開展
「立山曼荼羅に描かれる称名滝(左)
▲称名滝の過去の紅葉風景(右)

 秋の深まりとともに山から平野部へ紅葉前線も降下中。日本一の落差を誇る称名滝の周辺では例年10月下旬から11月上旬にかけて紅葉の見ごろを迎える。

 称名滝は、平安時代の書物「今昔物語集」のほか、立山曼荼羅の絵解き台本といわれる「立山手引草」などには「勝妙ノ滝」と書かれている。現在の「称名」という字が当てられるようになったのは江戸後期頃のこと。法然上人が立山登拝した際、滝を見て、その轟音が「南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏」と称名念仏を唱えている声に聞こえたことから「称名滝」と名付けられたとされる。滝は4段になって流れ落ちる。水煙を上げながら流れ落ちる滝と、ナナカマドやヤマモミジなどの紅葉の絶景を楽しみながら、大瀑布の流れ落ちる音に耳を澄ませてみたい。


▲「立山曼荼羅」立山黒部貫光
株式会社本の一部。
称名滝の流れにそって
「南無阿弥陀佛」の文字

 立山博物館の展示館では、今年度も春夏秋冬それぞれにテーマを設けて立山曼荼羅を特別公開。今年度第3弾となる秋の立山曼荼羅特別公開展では、「立山曼荼羅に描かれる称名滝」を開催中<12月2日(日)まで>。立山曼荼羅に称名滝がどのように描かれているのかを関連資料とともに紹介している。

立山曼荼羅とは、立山信仰の世界を絵解きする際に使われた絵画。衆徒たちはこれを携えて布教に出かけた。現存している立山曼荼羅は50本とされ、特別公開展では「立山曼荼羅」立山黒部貫光株式会社本と「立山曼荼羅」称名庵本の2本を展示。立山黒部貫光株式会社本では、称名滝の流れにそって「南無阿弥陀佛」と記されており、先述の伝説にちなんで書かれたものと考えられる。50本の立山曼荼羅の中で唯一称名念仏が記された貴重なものだ。

 称名庵は、かつて富山市石田村にあったとされる寺院。この村の若林太平が立山・称名滝の巌上から招来した如意輪観世音菩薩を奉じて元禄3年(1690)に開基したという。立山曼荼羅には、太平の夢に現れた如意輪観世音菩薩と称名滝に現れた如意輪観世音菩薩が描かれている。

●明治元年から150年目の特別企画展

 特別企画展の話題をもう1つ紹介しよう。明治元年から150年目にあたる今年。立山博物館では、「立山の明治維新―継承、そして創造―」を開催中<11月4日(日)まで>。

 明治になり、新政府は神仏を同じ場所で祀ることを禁止し、神道を国家公認の宗教にしようと神仏分離政策を実施した。神仏分離の動きは、仏閣を破壊し、仏像、仏具を散逸させる廃仏毀釈を招いた。神仏が集合した立山も例外ではなく、立山信仰の拠点であった芦峅寺・岩峅寺両村落の宗教活動は大きな打撃を受けた。

 本展では、立山信仰によせる人々の「こころ」と、立山信仰の新たな「カタチ」の創造が、現在の立山の信仰にどのように継承されたのかを、各地に遷された仏像や仏具、古文書などを手がかりとして紹介する。

 会場は、「Ⅰ 立山の神仏分離―立山権現から雄山神社へ」、「Ⅱ 立山の下山仏―立山を離れた仏たち」、「Ⅲ 立山によせる思い―立山信仰、こころの継承」、「Ⅳ 立山講社の結成―新しいカタチの創造―」に分かれている。「Ⅱ 立山の下山仏―立山を離れた仏たち」のコーナーでは、立山山中、芦峅寺、岩峅寺を離れた主な仏像、仏具を紹介。別山に安置されていたとされる帝釈天立像(立山博物館蔵)、浄土山に安置されていたとされる阿弥陀如来立像と観音菩薩立像(林證寺蔵)、立山元本社本尊と伝わる阿弥陀如来立像(松林寺蔵)など貴重な仏像を見ることができる。10月20日(土)、27日(土)、11月4日(日)には担当学芸員による解説会が予定されている。いずれの日も14時から。


▲特別企画展「立山の明治維新
―継承、そして創造―」(左)
▲立山を離れた仏像がお里帰り(右)

 立山博物館では、「紅葉シーズンの称名滝と立山曼荼羅をぜひ見に来てください。『立山の明治維新―継承、そして創造―』は、県内外に散逸した仏像、仏具のお里帰りの企画でもあります。立山信仰を支える人々の“こころ”と、現代に繋がる立山信仰の“カタチ”の創造から、新しい魅力を感じていただければ幸いです」と話している。

問合せ
●富山県[立山博物館]
TEL.076-481-1216
FAX.076-481-1144
http://www.pref.toyama.jp/branches/3043/3043.htm

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