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2017年 10月 11日 [ トピックス ]

No.827:日本固有の防災遺産 立山砂防の防災システムの世界遺産登録に向けて

 県では、世界に誇る防災遺産である立山カルデラの歴史的砂防施設群の世界遺産登録を目指し、世界の歴史・文化における傑出した価値の調査研究や検証を進めるとともに、立山砂防の魅力を発信するさまざまな取組みを行っている。併せて、立山カルデラ砂防博物館で開催中の特別展「火山の国に生きる」についても紹介しよう。

●立山カルデラの歴史的砂防施設群


▲「白岩堰堤砂防施設(国指定重要文化財)

 富山県には、常願寺川をはじめとする世界有数の急流河川が多く、昔から幾度となく河川が氾濫した。そこで先人たちは持てる知恵や技術を駆使しつつ、治水や砂防に懸命に取り組んできた歴史がある。
 その代表例が立山砂防だ。立山には、世界に類を見ない降水量に加えて、立山カルデラが存在する。立山カルデラは、弥陀ヶ原高原に隣接した東西約6.5km、南北約4.5km、面積約2300haの楕円形をした巨大な凹地で、ここに堆積する土砂の流出によって常願寺川が氾濫を繰り返してきた。立山カルデラの歴史的砂防施設群は、長年にわたり崩れを防ぎ、流れ出す土砂を止め、下流の富山平野に住む人々を土砂災害から守り続けてきた。
 なかでも、昭和14年に建設され、砂防堰堤(えんてい)としてわが国初の重要文化財となった「白岩(しらいわ)堰堤砂防施設」は、副堰堤を含めると日本一の高低差(108m)を誇る巨大堰堤だ。また、昭和12年に建設された「本宮(ほんぐう)堰堤」は、500万立方メートルという日本最大の貯砂量を誇る。これらの防災遺産である立山砂防防災システムは今なお現役であり、国土保全に重要な役割を担っているのみならず、世界的にも高い歴史的・文化的価値を有している。

●世界文化遺産登録に向けた魅力発信

 そこで県では、平成19年に「立山・黒部 防災大国日本のモデル -信仰・砂防・発電-」を世界文化遺産候補として提案した。文化庁からは「特に砂防の提案に大変見るべきものがあり、発想も新しい」との評価とともに、「その評価が世界的に検証され確立されるよう研究、努力するとともに、国の文化財指定を進めること」という課題が示された。
 これを受け、県は立山砂防を中心に、砂防堰堤の構造型式の調査など、立山・黒部地域の資産的価値の充実に努めた。その結果、平成21年には、まず白岩堰堤が砂防施設として日本初の重要文化財に指定された。現在、本宮堰堤と泥谷(どろだに)砂防堰堤も重要文化財に指定されるよう、努力を続けているところだ。
 また、県では立山砂防の存在や世界的な遺産としての魅力を幅広く知っていただくため、毎年、シンポジウムを開催している。今年、平成29年10月1日に東京で、約300人を集めて「立山砂防国際シンポジウム」を開催し、西村幸夫氏(日本イコモス国内委員会委員長)など世界遺産の最前線で活躍する専門家による講演やパネルディスカッションを通して、立山砂防の歴史的・文化的な価値や魅力を広く発信した。
 さらに、高校生や県内外の大学生を対象にユースプログラムを開催。世界遺産に関する講座や現地視察の実施のほか、今年度は新たに立山砂防の価値や砂防技術の歴史、役割などを分かりやすく解説するアニメ映像を製作した。


▲立山カルデラ視察会

 県では、これらの活動をさらに拡充し、引き続き、関係市町村や関係団体と連携・協力しながら、立山砂防の世界文化遺産登録に向けて取り組んでいく。平成30年10月には、本県で災害の防止・軽減に関する学際的な研究の促進と防災技術・知識の普及を目的とした国際防災学会(インタープリベント2018)が開催予定。学会に集まった国内外の防災研究者など約300名に、立山砂防を中心とした富山県の防災の取組みなどをアピールする。県企画調整室では、「この絶好の機会をとらえ、立山砂防の魅力を国内外に発信していきたい」と話している。

●立山カルデラ砂防博物館、特別展「火山の国に生きる」

 立山山麓にある富山県立山カルデラ砂防博物館は、常願寺川の源流部にある侵食作用によって形成された立山カルデラの峻厳な自然と、県土の保全のために行われてきた砂防事業を紹介している。
 同博物館では現在、特別展「火山の国に生きる」を開催中<12月24日(日)まで>。全国火山系博物館ネットワークの巡回展として、日本の代表的な火山とそこで起きた火山災害を立山の火山活動を含めて紹介している。

 日本列島は環太平洋火山帯に属し、火山活動が活発な地域。国内には現在111の活火山がある。特別展では、火山噴火の仕組みや噴出物、火砕流、世界と日本の活火山などの解説をはじめ、20世紀の100年間で4度も噴火活動が観測された世界的に見ても活発な活火山である北海道の有珠山、1888年の水蒸気噴火で大規模な山体崩壊が発生し、馬蹄型のカルデラができた磐梯山、10万年前以降、大量のマグマの噴出により、円錐形の秀麗な姿となった富士山、2014年9月27日の水蒸気噴火で死者58名という戦後最悪の火山災害を引き起こした御嶽山、新しい陸地を広げつつある小笠原諸島の西之島などをクローズアップしている。


▲特別展「火山の国に生きる」(左)、
立山火山起源の溶結凝灰岩(左)と
デイサイト(右)

 展示では、富山県内唯一の活火山で、22万年前から繰り返し噴火し、室堂平から弥陀ヶ原、美女平、五色ヶ原を作り出した立山火山をはじめ、そこから10万年前に噴出した大火砕流が作り出した溶結凝灰岩の台地・弥陀ヶ原、硫黄泉がわき出し、火山ガスが吹き出している地獄谷、立山カルデラ内で硫黄泉が湧出している新湯などについても紹介している。

 火山の噴火でできた岩石にも注目したい。立山・室堂平の溶岩台地を構成する立山火山起源のデイサイト(玉殿岩屋)や、自重によって火山礫が潰されてレンズ状に変形した溶結凝灰岩(立山町芦峅寺)のほか、2016年10月8日に阿蘇中岳第一火口で発生した噴火の噴石、箱根火山による輝石安山岩など、貴重な岩石を観察できる。

問合せ
立山砂防の防災システムの世界遺産登録について
●富山県総合政策局企画調整室(世界遺産担当)
TEL.076-444-4604
FAX.076-444-8694
http://www.pref.toyama.jp/cms_sec/1002/

特別展「火山の国に生きる」について
●立山カルデラ砂防博物館
TEL.076-481-1160
FAX.076-482-9100
http://www.tatecal.or.jp/

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