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2016年 12月 14日 [ イベント ]

No.785:県立近代美術館のフィナーレを飾る企画展へ!

 来年、「富山県美術館」として、新しく生まれ変わる県立近代美術館。平成28年12月28日(水)のクローズに向けて、移転前最後の企画展となる「MOVING!-ミュージアムが『動く』」を開催中。また、18日(日)にはクロージングイベント「10Days Older」も開幕。著名な照明アーティストによるスペシャルライトアップなど楽しみな10日間。近代美術館との別れを惜しみながら過ごそう!

●35年間、ありがとう!“MOVING”をテーマに作品展示


▲吹き抜けのフロアに展示された
「木の肉・土の刃Ⅳ」(伊藤公象作)

 県立近代美術館は1981年7月に開館。巨大なドーム型天井と吹き抜け空間を生かし、20世紀初頭から現代に至る美術の流れを世界、日本、富山の3つの視点から展望し、紹介してきた。来年8月26日(土)、名称を「富山県美術館」<愛称:TAD(Toyama Prefectural Museum of Art and Design)>と改め、富山駅北の富岩運河環水公園西地区にオープンする。

 近代美術館の最後を飾る企画展のテーマは“MOVING”。間近に迫った「引っ越し」とともに、人間や生きものの動き、心の内面の動き、芸術に関わるさまざまな動きを象徴させた。このテーマに沿って選び抜いた収蔵作品と、陶造形作家・伊藤公象さん、現代美術作家・田村友一郞さん、アーティスト・淺井裕介さんの3人の招待作家の作品を展示し、35年の歴史を締めくくる。


▲「雪ノ下鯉瀧壺」(田村友一郎作)

 会場は、「Ⅰ.動きを表現する」、「Ⅱ.心動かすー旅立つもの、残されるもの」、「Ⅲ.『発生の現場』としての美術館」の3つのゾーンからなる。「Ⅰ.動きを表現する」では、伊藤公象さんによる巨大なインスタレーション「木の肉・土の刃Ⅳ」が圧巻。陶芸に使われる陶土や磁土を斜めに薄くスライスして焼きしめた陶片や磁土片約6,800ピースが、吹き抜けの展示室の中央に並ぶ。中央の白から茶、黒への広がりは、木の年輪を思わせる。有機体の集まりのようで、陶片がザワザワと音を立て、動いているかのような錯覚にさえ陥る。2階の常設展示室から見下ろしてみるのもいい。直径12mの円形の生命体に吸い込まれるかのような不思議な感覚が味わえる。

 「Ⅱ.心動かすー旅立つもの、残されるもの」に展示された「雪ノ下鯉瀧壺」は、富山県旧大山町出身の田村友一郎さんの作品。富山をめぐる移動とその記憶に焦点を当てたもので、高校時代に通学で使った富山地方鉄道(地鉄)の座席と、その上にブロンズ製の『まんが道』(藤子不二雄A※○にA)が置かれている。座席のそばには富山の風景を描いた絵画(美術館所蔵)を飾るなど凝った演出で、車内にいるかのような雰囲気が漂う。『まんが道』は高校時代に東京への憧れを持った田村さんにとってのバイブル。友人たちと貸し借りしたのが地鉄の車内だったという。今回、作品制作のため、『まんが道』を高岡銅器で鋳造。ドロドロに溶けた金属が型に流し込まれていく様子や、地鉄を利用する今の高校生の姿なども映像で紹介している。


▲「双子たちの学びと遊び」(左)と
「土の星の人」(淺井裕介作)

 「Ⅲ.『発生の現場』としての美術館」では、訪れた地の土や、マスキングテープなどを素材にした淺井裕介さんの作品を鑑賞することができる。巨大な壁面や帆布を覆い尽くすように描かれた植物や生きもの……洞窟壁画を見るようだ。「双子たちの学びと遊び」では、大きなねずみたちが絵の上を動き回り、逃げ出してしまうかのよう。「土の星の人」、「生きている自然」は、12月2日までの13日間に美術館エントランスで地元サポーターと共に公開制作を行った作品。近代美術館の敷地や富山県美術館の建設現場の土のほか、呉羽山や八尾の土など県内各地の土、青森、熊本、インドなどの土も使われた。訪れた場所の土と地元の人々の参加によって、「絵が生長していく」と作者はいう。

●初めてのライトアップも楽しみ

 12月18日(日)からの「10 Days Older」では、アーティスト・髙橋匡太さんによる光を使った特別な空間が誕生する。髙橋さんが円形をドローイングした果実袋に、東京や近代美術館の近隣の小学校の児童が「スマイル」を描く。その果実袋は「ひかりの実」と呼ばれ、LED照明で輝く仕組み。期間中の17:00~19:30には、美術館入り口の樹木に約600個の「ひかりの実」が吊されて、美術館を美しく照らす。光×コミュニケ―ションによるインスタレーションだ。23日(金・祝)には、髙橋さんが来館し、参加者と一緒に「ひかりの実」を作るワークショップを開催。16:30より約30分間、セレモニーと髙橋さんによるスペシャルライトアップも予定されている。

 また、期間中に「meeting shadow play」も企画。これまでライトアップされたことがなかった近代美術館をライトのカラーで投影する。参加者がポーズをとり、外壁に映った影を撮影することもできる。閉館までの日数を投影する光によるカウントダウンも予定している。

 富山県立近代美術館では、「35年間の感謝を込めた最後の企画展。ドーム型天井と吹き抜けを記憶にとどめてほしい。新しい美術館は、子どもたちが気軽にアートやデザインに触れられる場となる。お気に入りの作品を見つけて、友だちになってみては。うれしいときや悲しいとき、どんなときにでも訪れて絵と会話できるような、自分だけのとっておきの場所を見つけてほしい」と話している。

問合せ
●富山県立近代美術館
TEL.076-421-7111
FAX.076-422-5996
http://www.pref.toyama.jp/branches/3042/3042.htm

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