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2016年 11月 9日 [ イベント ]

No.781:富山の巨人・浅野総一郎、九転十起の生涯を紹介

 高志の国文学館(富山市舟橋南町)では、企画展「浅野総一郎 ― 九転十起の生涯」を開催中<12月19日(月)まで>。近代日本をつくった富山県氷見市出身の実業家、浅野総一郎の生涯をたどりながら、その人間的魅力を紹介する。併せて、文学館・ヘルン文庫コーナーの展示替えの情報も発信。

●波瀾万丈の人生を追う


▲綴織格天井原画「扇散らし日本名所之図」や
綴織大廊下天井原画「雲鶴」(縮図)、
九転十起の像などを展示

 企画展「浅野総一郎 ― 九転十起の生涯」は、富山が生んだ「巨人」に焦点をあてた第一弾。浅野総一郎は、1848年、氷見郡藪田村(現在の氷見市藪田)で、医者の家に生まれたが、将来は大商人になろうと夢見て、1871年、23歳のときに上京。浅野セメント(太平洋セメントの前身の1つ)を設立し、炭鉱、海運、電力などと事業を拡大し、浅野財閥を築いた。卓越した先見性と果敢な実行力で京浜工業地帯の基礎を築いたが、数々の失敗も経験した。それでも不撓不屈の精神で、失敗のたびに立ち上がり、七転び八起きならぬ、「九転十起(きゅうてんじっき)の男」とも称された。

 展示は全6章で構成されている。第1章「大商人への憧れ―何度失敗してもくじけないたくましさ」では、氷見・藪田村での誕生から、大商人に憧れて故郷で手掛けた事業と失敗、上京してからの再起の様子など、「九転十起」の様子を、浅野泰治郎・良三著『浅野総一郎』などに記されているエピソードをまじえながら紹介している。


▲第1章「大商人への憧れ―何度失敗しても
くじけないたくましさ」(左)
▲東洋汽船 扇型ポスター、
浅野造船所で建造された
貨物船の模型などが並ぶ(第2章)(右)

 第2章「事業の鬼―卓越した着眼点と行動力」では、「浅野工場」(のちの浅野セメント合資会社)や東洋汽船株式会社の設立、巨船建造、東京湾埋立てなどの足跡などを紹介。浅野の書「努力と度胸 かせぐにおいつくびんぼうなし」、東洋汽船 扇型ポスター、札幌麦酒設立時の約定書(複製)、浅野造船所で建造された貨物船の模型などを展示。資料からは、浅野の懸命な働きぶりや人柄が伝わってくる。

 第3章「二大巨人との交わり―最大の理解者、渋沢栄一と安田善次郎」では、渋沢、安田との関わりを紹介。渋沢との初対面のときに「腕で飯を食う心がけが肝心」と言われ、浅野の処世上の金言となったことなどを紹介している。安田の直筆の日記も展示の見どころ。洋行に出発する浅野を新橋駅まで見送りに行ったことや東京湾埋立事業について協議したことなどが記されている。

●一見の価値あり、「扇散らし日本名所之図」

 第4章「伝統文化の粋を世界へ―紫雲閣の建築」では、来日する外国人を接待する迎賓館として浅野が建設した「紫雲閣」について紹介。綴織格天井原画「扇散らし日本名所之図」や綴織大廊下天井原画「雲鶴」(縮図)、「雲鶴」の試織を貼った「高級裂地見本帳」などを展示している。「扇散らし日本名所之図」は扇面の中に、金閣寺・銀閣寺、厳島神社、富士・武蔵野、石山の月、吉野など日本各地の名所が描かれた図。琳派の影響を受けた大胆な彩色が圧巻だ。企画展では21枚の展示だが、実際の天井には80枚がはめ込まれ、絢爛豪華な舞のようであったといわれている。

 第5章「故郷への貢献―庄川の発電事業」では、富山の近代化に大きな足跡を残した「高伏運河建設構想」と「庄川水力発電構想」を取り上げている。「高伏運河建設構想」は高岡市街―伏木港間約6kmに運河を掘削し、両側を工業地帯とするもの。この構想は実現しなかったものの、富岩運河建設のきっかけとなった。「庄川水力発電構想」は急流で水量豊かな庄川に着目した大事業。建設した小牧ダムはその規模で当時「東洋一」と称された。


▲旧浅野邸で使用されていた
ステンドガラスなど

 第6章「人材育成への情熱―校訓「九転十起」」では、「九転十起」を校訓に掲げるなど浅野の建学精神が生き続ける浅野学園を紹介。旧浅野邸で使用されていたステンドガラスなども展示されている。

 関連イベントとして、映画「九転十起の男2 激動編」が11月12日(土)14:00~、「九転十起の男3 グッドバイ」が12月10日(土) 14:00~、文学館で上映される。11月23日(水・祝)13:00~14:30には、両作品の監督・脚本を手掛けた市川徹さんのトークイベント「映画監督が語る浅野総一郎」も予定されている。いずれも参加申込みは不要。詳細は文学館のホームページ(http://www.koshibun.jp/)にて確認を。

 高志の国文学館では、「何度失敗してもその度ごとに立ち上がり、飛躍を遂げていった浅野総一郎の生涯はドラマチック。富山の巨人展の第一弾にふさわしい人物と考えました。現代を生き抜くヒントにもなるでしょう。不撓不屈の精神を感じてください」と話している。

●「ヘルン文庫コーナー」の展示替え


▲ヘルン文庫コーナー

 高志の国文学館・常設展示室内の「ヘルン文庫コーナー」の展示替えの話題も紹介しよう。富山大学附属図書館のヘルン文庫に収蔵されている小泉八雲旧蔵書のなかから北陸に関する記述のある本が新たに展示された。

 『北國奇談巡杖記』は金沢の俳人、綿屋北巠が加賀、越中、能登、越後、佐渡、若狭、越前の名所旧跡をたずね、見聞した各地の地理・物産や奇談を集めた書。巻二の越中篇で、五箇山に伝わるこきりこ唄などが紹介されている。

 さまざまな妖怪変化を題材にした狂歌を分類・収録し、彩色画を添えた『狂歌百物語』は、小泉八雲の『天の川綺譚 その他』所収の「化けものの歌」の題材になっている。下編の第七篇には「立山」、「蜃気楼」を題材にした狂歌が収められている。

 越後国三条の橘崑崙が越後各地の伝説、怪談、奇談を集めた『北越奇談』(巻五)や、越後国塩沢の鈴木牧之が雪国の生活について全国に知らせたいとまとめた『北越雪譜』(初編巻之下)なども並ぶ。小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)が収集した書を見ながら、伝説に満ちあふれた日本各地に思いを馳せてみたい。

問合せ
●高志の国 文学館
TEL.076-431-5492
FAX.076-431-5490
http://www.koshibun.jp/

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