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2015年 9月 30日 [ トピックス ]

No.725:空飛ぶ救命救急室「ドクターヘリ」、富山と岐阜県飛騨地域北部へ

 富山の救急医療に力強い味方!北陸3県で初めてとなるドクターヘリ「富山県ドクターヘリ」が平成27年8月24日から運航を開始した。病院から遠い地域からの搬送時間が短縮できるだけでなく、医療スタッフが重篤な救急患者に対してより早期に必要な診断や処置を行うことで、救命率の向上や後遺症の軽減につながる。大切な命を救うため、大空へ。ドクターヘリの活躍に期待したい。

●富山県内では343カ所のランデブーポイントに着陸


▲8月23日の運航開始式で出席者らが
富山県ドクターヘリを見学
(富山県立中央病院の屋上ヘリポート)(左)
▲ドクターヘリによる救急患者の
搬送訓練の様子(右)

 ドクターヘリとは、患者監視モニターや除細動器、人工呼吸器など救命救急の医療機器や、医薬品などを装備した救急医療専用のヘリコプターで、“空飛ぶ救命救急室”と呼ばれることもある。救急医療を専門とする医師(フライトドクター)と看護師(フライトナース)が搭乗して救急現場へ向かい、救急患者に対して、速やかに救急医療を施すことができる。

 救命救急は時間との闘いだ。心臓が停止すると3分、呼吸が止まったら10分、大量出血したら30分以内に適切な処置をしないと、助かる可能性が一気に下がるといわれる。すぐに治療を始めることで、救命率が上がる。ドクターヘリの必要性はまさにそこにある。

 富山県はコンパクトな地形に道路網が整備されており、救急車の現場到着時間が7分弱、病院搬送までの時間が30分弱と全国最短。県の救急医療体制が高いレベルにある。ただ、高齢化の進展に伴い、近年、救急車で搬送される患者の数が増え、病院までの搬送時間も長くなる傾向にあり、救急医療体制の一層の高度化を図るため、県が導入を決めた。

 消防機関から要請を受け、富山県立中央病院・屋上ヘリポートからフライトドクター、フライトナースが乗り込み、現場近くのランデブーポイント(救急車との合流地点:県内343カ所 ※平成27年9月25日時点)に着陸。現場から救急車で運ばれてきた患者に初期治療を行ったうえで、ヘリで受入先の病院へ搬送する。富山県立中央病院、富山大学附属病院など県内15病院が搬送を受け入れている。

 なお、「富山県ドクターヘリ」は、富山県と岐阜県が共同運航の協定を結んで運航しているのも話題だ。基地病院は、富山県立中央病院。運航エリアは県内全域のほか、従来から県内の医療機関をよく利用され、生活圏や文化面でも交流の深い岐阜県飛騨地域北部(高山市、飛騨市、白川村)をカバーする。


▲富山県ドクターヘリの運航エリア

 機体は、イタリアのアグスタ・ウエストランド社の最新機種「AW109SP」。4,000mを超える山々がそびえるスイス・アルプス山脈で救助活動を行っている団体「REGA」の要望によって開発された機体で、長い航続距離、航続時間、速いスピード、十分な機内空間・収納空間など、高高度における救助遂行に必要な性能を備えている。最大巡航速度は約290km/hで、県内は出動要請からほぼ10分以内(半径46km圏内)、飛騨地域北部はほぼ20分以内(半径93km圏内)で到着する。

 運航は原則として毎日。ただし、夜間や天候・視界不良、強風のときは運航しない。搭乗するのは、基本的に機長、整備士、フライトドクター、フライトナースの4人。患者の家族は、フライトドクターが必要と判断し、機長が了解した場合のみ搭乗できる。ドクターヘリは消防機関からの要請を受けて出動する。一般の人が直接出動を求めることはできない。搬送に掛かる費用は無料だが、診療については費用が掛かる。


●運航1カ月で7人の一命とりとめ

 運航開始から9月23日までの1カ月間の出動件数は20件。内訳は救急要請が18件、病院への患者搬送が2件。救急要請のうち、医師による救命措置で一命をとりとめたケースが7件。命に関わらない症状のケースが8件、搬送後に死亡が確認されたケースは3件だった。出動先は救急搬送に時間がかかる山間部からの要請が多かった。里山や山岳地が広がる富山や岐阜の特徴を表している。県では、今後、病院や消防機関と症例検討会を開いて個別の事例を分析し、ドクターヘリの導入効果や運航の改善点を探ることにしている。

 県立中央病院では、救命救急センターの医師と看護師がフライトドクター、フライトナースとして、ドクターヘリによる救急医療に従事。5年以上の医師、看護師経験があり、救急専門医として1年以上、救急看護師として3年以上勤務し、外傷蘇生などを学ぶための講習を受講したうえで、3週間のドクターヘリ搭乗研修を修了している。


▲救急患者を機内のストレッチャーの上ヘ
(搬送訓練の様子)

 県では、ドクターヘリ導入を救急医療を担う優秀な人材の確保、育成につなげたい考えだ。これまで全国の研修医や医学生に富山の救急医療を紹介する冊子を配布したり、著名な救命救急医を招いたセミナーを開催したりしてきたことで、ドクターヘリの基地病院である県立中央病院では、初期臨床研修の希望者が例年に比べて増加した。ドクターヘリの本格的な運用によって、救命救急医を志す医学生の関心も高まっているようだ。

 富山県医務課では、「高齢化が進み、救急搬送の需要がますます高まっています。ドクターヘリの導入で、運航開始から約1カ月が経過したところですが、フライトドクターがすぐに治療を始めることで救命率が向上するとともに、後遺症の軽減につながるという効果が出始めています。より一層ドクターヘリを効果的に活用し、一人でも多くの命を救うことができるよう努めてまいります」と話している。

問い合わせ
●富山県厚生部 医務課
TEL.076-444-3219
FAX.076-444-3495
http://www.pref.toyama.jp/cms_sec/1204/
http://www.toyama-drheli.net/

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