海越しの立山連峰に虻が島の絶景――2014年10月、富山湾が「世界で最も美しい湾クラブ」に正式加盟。世界遺産のモンサンミッシェル湾(フランス)など、世界の名だたる観光名所と肩を並べる存在になった。国内では、日本三景の1つ、松島湾(宮城県)に続き2カ所目で、日本海側では初めて。加盟記念モニュメントが海王丸パークに設置された話題や、加盟記念のオリジナルフレーム切手の販売の話題も併せて紹介しよう。

●世界に向けて富山湾の魅力を発信

　2014年10月18日、韓国・麗水(よす)市で開催された「世界で最も美しい湾クラブ」の総会で富山湾の加盟が決まった。同クラブ(本部：フランス)は1997年に設立。湾を活用した観光振興と資源の保全を目的として活動する非政府組織(NGO)で、国連教育科学文化機関(ユネスコ)が後援している。これまでに世界遺産のモンサンミッシェル湾(フランス)、ハロン湾(ベトナム)、国際的観光地であるサンフランシスコ湾(アメリカ)など24カ国1地域から36の湾が加盟しており、富山湾は37番目の加盟となった。

　石井知事は、総会でのプレゼンテーションで、

1. 1,300年前の「万葉集」 で、越中国守の大伴家持に歌われるなど、世界でも希な、海越しに3,000ｍ級の立山連峰の大パノラマが見える。
2. 立山から富山湾の水深1,000ｍまでの高低差4,000ｍのダイナミックな地形の中、豊かな水が循環しており、海底から真水が湧き出している。
3. 対岸の建物や海上の船が、長く伸びて見えたり、逆さまに見えたりする蜃気楼は、毎年確実に観測できる場所は、日本で富山県魚津市のほか数箇所に限られている。
4. 海底から湧き出る地下水のおかげで1万年前の海底林が腐食せずに現存している。
5. 春の夜に青い光を放つホタルイカが何万もの群れで押し寄せる光景は、世界的にも珍しい。(国指定特別天然記念物 ホタルイカ群遊海面)
6. 「天然の生簀（いけす）」と呼ばれるほど水産資源が豊富で、富山湾で獲れる海の幸は、新鮮でとても美味しい。

など、多彩で素晴らしい富山湾の魅力をアピールした。

　また、その富山湾の魅力を一層ブラッシュアップするため、1.県民参加による水と緑の森づくり、2.日本最初のレジ袋の無料配布廃止の取組みとエコ・ストア制度の推進、3.富山県をはじめ対岸諸国を含めた環日本海の自治体の連携による国際環境協力、4.国連機関（ＮＯＷＰＡＰなど）や大学等と連携した海洋環境の保全、5.地球温暖化対策など自然環境保全のための小水力、太陽光、バイオマス等、再生可能エネルギーによる発電の積極的な推進、6.美しい富山湾を活用したサイクリング・ロード、サイクル・カフェの整備、マリーナ施設の拡充とマリン・スポーツの振興などの取組みをアピールした。

　出席した会員湾から高い評価を得、全会一致で富山湾の加盟が決定し、クラブ理事長から知事に加盟証書が贈られた。

●海王丸パークに記念モニュメント

　富山湾の「世界で最も美しい湾クラブ」への加盟を記念したモニュメントが、海王丸パーク(射水市)に設置された。高さ2.2ｍ、幅1ｍで、北陸新幹線の車両に使われている曲面ガラスに、高岡の鋳物技術を駆使して作ったハート型のクラブロゴマーク(The Most Beautiful BAYS in the WORLD)を配置。このほか、台座石は常願寺川流域で採れた安山岩など、すべての素材に県内産が使用されている。「海の貴婦人」と称される帆船・海王丸と新湊大橋をバックに、富山湾と調和する透明感のあるデザインが目を引く。

　県内郵便局でオリジナルフレーム切手『「世界で最も美しい湾クラブ」加盟記念 神秘の海・富山湾』の販売が始まったことも話題だ。灘浦海岸からの立山連峰(氷見市)、雨晴海岸からの立山連峰(高岡市)、岩瀬・古志の松原(富山市)、ヒスイ海岸日の出(朝日町)など富山湾沿岸9市町の景観のほか、ブリ、シロエビ、ホタルイカを使ったデザインの切手もある。発行は1,500シートで、1シート1,230円(82円切手×10枚)。切手のコレクションに加えてみたり、手紙に使って富山湾のPRをしてみてはいかがだろう。

　現在、富山県では、富山湾の眺望を楽しめるサイクリングコースやサイクルステーション・カフェの整備をはじめ、マリンスポーツの振興、外航クルーズ客船の誘致、マリーナ施設の拡充や他港に停泊する船舶オーナーの誘致を進めるなど、世界で最も美しい湾の称号にふさわしい富山湾の魅力のブラッシュアップに努めている。