トピックス

アーカイブ

2014年 8月 27日 [ トピックス ]

No.672:富山県立大、国内初の「脳波個人識別技術」を開発!イヌの気持ちがわかるシステムも研究中!

近年、脳の情報を読み取り、機械を制御する技術「ブレインマシンインタフェース」が世界で盛んに研究されている。富山県立大学工学部情報システム工学科の唐山英明(とうやまひであき)准教授(生体情報理工学)は、特殊な脳波を読み取って個人を識別する「脳波個人識別技術」を国内で初めて開発した。指紋などの方法よりも安全性の高い個人認証システムの実現を目指す。

●究極の個人認証システムの実現に期待


▲研究室で学生が実験中。
キャップを被り、脳波を計測

 自宅の玄関前で好きな音楽を聴いたり、写真を見たりすると、玄関のカギが開く……そんな夢の暮らし、技術がもうすぐそこに!?。唐山准教授が開発した「脳波個人識別技術」は、特定の音を聞いたり写真を見たりすると、約0.3秒後に発生する脳波「P300」を活用した。この脳波は、たとえば、ホームページで情報を検索していて、知りたい情報に出合ったときや関心を持ったときなどに発生する。波形に個人差があり、唐山准教授はこの性質に着目した。

 実験では、研究室の学生約10人に脳波を検出するキャップを被ってもらい、「ピピピ」という電子音を聞かせたり、風景などの写真を見せたりして脳波を計測し、データをコンピュータに登録。同じ環境で再度計測したところ、1回目とほぼ同じ脳波が確認できた。それぞれの波形を比較した結果、音では約90%、写真では約97%の確率で個人を認識できたという。


▲交代し、それぞれの脳波のデータを収集

 従来の生体個人認証(バイオメトリクス)では、スマートフォンやパソコンのログイン、銀行のATM(現金自動預払機)などで、指紋や目の虹彩(こうさい)、手のひらの静脈などが使われている。暗証番号やパスワード、カギのように忘れたり、紛失したり、情報漏洩するリスクは低いが、本人固有のため、不正によって一度盗まれると、生涯その認証システムを利用できなくなるという欠点がある。

 一方、脳の情報の中でも脳波は比較的容易に計測が可能で、特に「P300」は、その人が見聞きする対象を変えることで、意図的に変化させることもできるため、盗用などの問題を解決する認証方法として注目されている。唐山准教授によると、国内では、アルファ波など別の脳波を用いた個人認証の研究が進められている。いくつかの脳波を組み合わせると、より精度の高い個人認証が期待できるという。

 今後、被験者の数を増やして技術の精度を高める。実用化に向けては、より手軽に脳波を測定できるセンサーの開発やデータを無線で飛ばす装置の開発などが必要になってくる。脳波個人識別技術の活用により、機密性が極めて高い情報にアクセスする際の究極の個人認証システムの実現が期待される。鍵の施錠やATMなどにアクセスするための個人認証をはじめ、体の不自由な人が体を動かさずにパソコンにアクセスできるなど、幅広く活用できるという。

 「2008年から研究を始め、計測技術を高めることでようやくここまできた。脳波の波形は個人によって異なり、他人に盗まれないメリットがある。脳波を測定する装置の小型化などが課題。100%の精度で個人を識別できる計測技術の開発を目指したい」と、唐山准教授は言葉に力を込める。

●イヌの気持ちがわかるシステム、研究中

 ペットの言葉や気持ち、行動が理解できたら、どんなに素晴らしいことだろう。人間とペットの新たな関係、コミュニケーションが構築できそうだ。

 そんな夢の実現に向けて、唐山准教授の研究室では、脳の信号を解析する上述の技術を応用して、離れた場所からイヌの行動を識別する行動認識ソフトウェアや、生体情報計測システムなどの研究開発にも取り組んでいる。情報システム工学と動物心理に関する知見を融合させたもので、イヌの行動様式をリアルタイムで判定するシステムだ。

 イヌの行動認識ソフトウェアの開発では、これまでに坂井ドッグスクールの協力を得て屋外で実験を行っている。災害救助犬のラブラドール・レトリバーの首と背中、しっぽの付け根にセンサーを取り付けてデータを収集。歩いたり、走ったり、階段を上ったりと、ソフトウェアで5種類の行動を見分けられるまでになった。システムを応用すれば、災害現場でのイヌの行動認識にもつながりそうだ。

 イヌの生体情報計測システムの開発では、富山国際ペットビジネス学院の協力を得て、ポメラニアンの頭と両目尻付近にセンサーを付けて、脳波と目の動きで発する生体信号「眼電」を測定。また、人物や物体の動きをデジタル的に記録する「モーションキャプチャシステム」を使って収集したデータを解析することで、飼い主の呼びかけに対する目線や脳波からイヌの心理状況を予測してきた。ペットの健康管理や見守りシステムなどへの応用が期待されている。

 唐山准教授は「生体情報計測システムは、イヌの脳波や視線を測定するシステム。イヌは飼い主の声を聞き分け、また顔の表情をよく見ていることがわかっている。実験するイヌを増やして幅広くデータを蓄積し、“イヌの気持ちがわかるシステム”を目指したい」と話している。

問い合わせ
●富山県立大学事務局教務課
TEL.0766-56-7500
FAX.0766-56-6182
http://www.pu-toyama.ac.jp

コメント

その他のトピックス

ページの先頭へもどる↑