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2012年 8月 15日 [ イベント ]

No.569-2:哀調、気品、叙情に酔いしれて―晩夏、初秋はやっぱり“おわら風の盆”

おわら風の盆
おわら風の盆
「越中で立山 加賀では白山 駿河の富士山 三国一だよ 唄われよう わしゃはやす」――初秋の風にのり、聞こえてくるのは、のびやかな唄、哀調を帯びた胡弓の音色。格子戸の家々や白壁土蔵の町並みが叙情豊かにおわら一色に染まる。「越中八尾おわら風の盆」(富山市八尾町)の季節はもう間近。8月20日(月)~30日(木)の前夜祭を経て、9月1日(土)~3日(月)の本番を迎える。晩夏から初秋、哀愁に満ちた八尾へ。

▲哀調を帯びた胡弓の音色と踊りに魅了(今町)

●8月20日から前夜祭

 「越中で立山 加賀では白山 駿河の富士山 三国一だよ 唄われよう わしゃはやす」――初秋の風にのり、聞こえてくるのは、のびやかな唄、哀調を帯びた胡弓の音色。格子戸の家々や白壁土蔵の町並みが叙情豊かにおわら一色に染まる。「越中八尾おわら風の盆」(富山市八尾町)の季節はもう間近。8月20日(月)~30日(木)の前夜祭を経て、9月1日(土)~3日(月)の本番を迎える。晩夏から初秋、哀愁に満ちた八尾へ。

 前夜祭は、20日(月)の福島(ふれあい広場・駅前通り)から始まり、21日(火)諏訪町、22日(水)西町、23日(木)鏡町、24日(金)天満町、25日(土)東新町・西新町、26日(日)東町・今町、27日(月)下新町、28日(火)西新町、29日(水)今町、30日(木)上新町の順で行われる。時間は各日20:00~22:00。11町で町流しや輪踊りを繰り広げる。

 八尾曳山展示館では、前夜祭期間中に「おわらステージ」が行われる。各日18:30~20:00に「おわら風の盆」紹介の映像上映、おわら踊り方解説、ステージでのおわら踊り鑑賞がある。踊り方を学び、前夜祭会場へ。実際、踊りの輪に入って、おわらの世界に身を置いてみては。おわらステージの料金は1,500円。チケットは全国のコンビニエンスストア・ローソンで販売中。販売状況に余裕がある場合、開催日に八尾曳山展示館で当日券が販売される。

 9月1日(土)~3日(月)のおわら風の盆本番、11町内でそれぞれ町流しや輪踊りがある。1日(土)・2日(日)は15:00~23:00(ただし、17:00~19:00は夕食・休憩のため踊っていない)、3日(月)は19:00~23:00。八尾小学校グラウンドでの演舞会(各町出演)も楽しみだ。各町内では、踊り手と地方(おわらを唄い、演奏する者)の大きな一団の町流し、地方だけの小人数の町流しが個々に町内を移動しながらおわらを披露する。聞名寺の門前、石畳の坂道、格子戸の造り酒屋前など、舞台が変われば、おわらの印象も違ってくる。また、町ごとに浴衣や法被の柄、模様も異なる。そんな違いを見てみるのもおわらを満喫する方法だ。ただし、女性の衣装では、黒帯は各町同じ。その昔、衣装を揃えた際、帯まで手が回らず、誰もが持っていた冠婚葬祭用の黒帯を用いて踊った名残のよう。編笠も印象的。当初は照れや恥ずかしさから手ぬぐいで顔を隠して踊ったといわれ、それが編笠に代わったとされる。

●ホタルとりに興じる姿を情感たっぷりに

 涼しげな揃いの浴衣で優雅に踊る女性、勇壮に力強く大地を踏む男性――おわらには「豊年踊り」、「男踊り」、「女踊り」の3通りの踊り方がある。町流しや輪踊りを中心に踊られる豊年踊りは、種まきや稲刈りなど農作業の動きを手や指先を巻くように表現する。男踊りは、かかし踊りともいわれる勇壮な踊り。苗を植える仕草、鍬打ち、稲穂が垂れる様子、稲刈り、刈った稲をはさに投げかける仕草などがあり、素朴で直線的な力強さがある。女踊りは、櫛で髪をとぐ仕草や化粧直し、ホタルとりに興じる姿などを情感たっぷりに表現しており、情感を内に秘めて踊る舞のよう。他の盆踊りのように発散する踊りではない。それぞれの踊り、所作をしっかりと見てみたい。

 おわらの真髄に触れるならば、観光客が少なくなり始めた23:00以降へ。公式行事を終えた地方や踊り手が自然に集まり、再び町に繰り出す。観光客向けではなく、町の人々が自分たちだけのためにおわらに酔いしれる時間だ。深夜、秋風にのって聞こえてくる胡弓の風雅な音色を、石段に座りながら静かに味わう。300年余の歴史を守っている人々の想いとともに更けていく夜を楽しんでみてはいかがだろう。

 町なかには「おわら歌碑」が佇む。八尾を愛した文人墨客の歌が刻まれている。“日本の道百選”の諏訪町通りのゆるやかな坂道に建つのが「八尾おわらをしみじみ聞けば むかし山風 オワラ 草の声」(佐藤惣之助)の歌碑。詠んでいるだけで、おわらの調べが聞こえてきそう。夜には常夜燈になり、おわらのぼんぼりとともに淡い光が闇を照らしてくれる。このほか、「八尾よいとこ おわらの本場 二百十日を オワラ 出て踊る」(渡辺紫洋)、「おたや地蔵さん この坂下は 今宵なつかし オワラ 月あかり」(野口雨情)など、おわら歌碑を鑑賞しながらの小さな旅に出掛けたい。

 季節は、お盆から晩夏、初秋へ。朝夕は暑さも和らぎ、虫の音も心地よく響く。「越中八尾おわら風の盆」が待ち遠しい。はやる気持ちを抑えて、まずは20日(月)からの前夜祭へ。風がささやくような美しい音色が心に深く染みわたっていく―。

▲諏訪社でのおわら踊り(左)▲諏訪町通り(中央)▲おわら歌碑(右)


問い合わせ
おわら風の盆行事運営委員会
●越中八尾観光協会
TEL.076-454-5138
●富山市八尾山田商工会
TEL.076-455-3181
●富山市八尾総合行政センター農林商工課
TEL.076-454-3117
http://www.yatsuo.net/kazenobon

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