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2012年 3月 14日 [ トピックス ]

No.548-1:子どもたちへ、絵本『春の苑 紅にほふ―はじめての越中万葉』

県は、越中万葉や大伴家持(おおとものやかもち)の世界を子どもたちに知ってほしいと、絵本『春の苑(その) 紅(くれない)にほふ―はじめての越中万葉』を発行した。万葉集の代表的歌人であり、編者ともされる大伴家持が、越中国守として越中に赴任してから都に帰るまでの8つのエピソードについて、12首の越中万葉歌を織り交ぜて紹介している。全国の主要書店での販売もスタートした。


●越中万葉の代表歌12首を絵とともに

 県は、越中万葉や大伴家持(おおとものやかもち)の世界を子どもたちに知ってほしいと、絵本『春の苑(その) 紅(くれない)にほふ―はじめての越中万葉』を発行した。万葉集の代表的歌人であり、編者ともされる大伴家持が、越中国守として越中に赴任してから都に帰るまでの8つのエピソードについて、12首の越中万葉歌を織り交ぜて紹介している。

 絵本は、未就学児から小学校低学年までの子どもたちが対象。平成23年度のふるさと文学の振興事業として県が企画・制作。高岡市万葉歴史館が文、挿絵画家の佐竹美保さん(富山県出身)が絵を担当し、射水市大島絵本館が監修した。A4変形型36頁、オールカラー。県内の公立図書館や小学校、幼稚園、保育所などに配布するほか、岩崎書店(東京)が全国の主要書店で販売。定価1,365円。

 家持は天平18年(746)~天平勝宝3年(751)の5年間、現在の富山県、越中に赴任し、仕事のかたわら、越中の自然や人々の暮らしに接して、223首もの歌を万葉集に残している。家持は、万葉集に473首を残したといわれており、その約半数が越中で詠まれたことから、越中時代は独創的な歌の境地を作り上げた時代ともいわれている。

 絵本の表紙は、夕暮れの庭に立つ、眉目麗しい家持と、くれない色に染まった桃の花が印象的。「春の苑(その) 紅(くれない)にほふ 桃の花 下照(したで)る道に 出(い)で立つ娘子(おとめ)」を紹介する本文頁と連動しており、この頁では桃の花を愛でる家持の妻も描かれている。

 表紙をめくると、「一三〇〇年ほどむかしのことです。おともの人をつれて、越中へやってきた人がいました。大伴家持です。越中は、いまの富山県のこと。家持は、越中をゆたかなすみよい国にしようと、とおい奈良のみやこからやってきたのです。」と物語が始まる。家持を歓迎する宴の様子が情感たっぷりに描かれており、越中の海山の幸を使った料理や、黄色の美しい花を咲かせたおみなえしが宴の席を彩っている。

●高志の国文学館で読み聞かせに活用

 宴は楽しく、よい気分になった家持は海へ。群青色を基調に描かれた渋谿(しぶたに)の海(現在の雨晴海岸あたり)の絵と、「馬並(うまな)めて いざうち行(ゆ)かな 渋谿の 清き磯廻(いそみ)に 寄する波見(なみみ)に」の歌が趣のある独特の世界を紡いでいる。絵を担当した佐竹美保さんは、「この絵が一番気に入っている」と話した。佐竹さんは、高岡市生まれで、高校を卒業後に上京し、現在挿絵画家として活躍中。「絵本の中でふるさとの美しい景色を描いた。親子で歌に詠まれた情景の素晴らしさを感じてほしい」と読者にメッセージを送っている。

 このほか、絵本には、立山の雄大な景観を楽しむ家持や、乙女たちが雄神川(おがみがわ)の冷たい水のなかで川藻を取る姿、男たちが婦負川(めいがわ)でかがり火を焚きながら川魚を取る鵜飼の様子、寺の井戸のほとりに咲く堅香子の花などが柔らかな筆遣いで描かれている。最後は、越中からの旅立ちの情景。「しなざかる 越(こし)に五年(いつとせ) 住み住みて 立ち別れまく 惜しき夕(よい)かも」と越中を離れる心境を詠んだ家持の歌を紹介している。

 今年7月6日に富山市中心部に開館する高志の国文学館の第1回企画展「大伴家持と越中万葉」では、越中万葉の世界と家持の実像を紹介するが、今回の絵本の原画を展示する予定。

 富山県生活環境文化部文化振興課は「家持が過ごした越中での5年間を越中万葉の代表歌12首と17枚の挿絵(水彩画)とともにたどる初めての絵本。富山の美しい自然を描いた絵がちりばめられている。巻末には、越中万葉についての解説や略年譜なども紹介している。文学館のオープニング企画展や子どもたちへの読み聞かせに活用していきたい」と話している。



問い合わせ
●富山県生活環境文化部文化振興課 高志の国文学館整備班
TEL.076-444-8929
FAX.076-444-8900
http://www.pref.toyama.jp/cms_sec/1718

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