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2000年 2月 21日 [ トピックス ]

No.056-1:富山が生んだ大家、故藤子・F・不二雄氏の名作「ドラえもん」が学問に


■富山大学横山教授、「ドラえもん学」を提唱
「ドラえもん」——世界に誇れる日本の漫画の代表格で、故藤子・F・不二雄氏(富山県高岡市出身)原作の不朽の名作。富山大学教育学部の横山泰行教授が、時代や世代を超えて支持されるその魅力を学問としてとらえた「ドラえもん学」を提唱している。
この「ドラえもん学」は、富山大学教育学部で開講されているが、単位には直接関係のない「コロキアム講義(非公式討論)」として本当に好きな人だけが選択できるという一風変わった科目。しかし、横山教授の「ドラえもん学」に対する姿勢は真剣そのもの。「フィクションを学問として分析するためには、作品のなかの客観的事実や物事の定義が明確なかたちで存在することが必要」と横山教授は語る。例えば、822話ある「ドラえもん」の物語のなかでは、秘密道具が重要な「核」となる存在だが、今までは秘密道具の定義が明確にされていなかった。

■データ化することでドラえもんの魅力の客観的分析が可能に
 そこで横山教授は、コマや吹出しの数、人物の登場回数などをすべてデータ化して、情報の曖昧さをなくし、「ドラえもん」を学問として分析する方向で研究を進めた。それによって、主な登場人物の台詞の数を分析してみると、ガキ大将のジャイアンの台詞の数は、実は頭脳肌のスネ夫の数とほぼ同じ。このことから、現代の情報化社会のなかでは、ガキ大将という存在は一昔前のように暴力だけで地位を守ることができず、ある程度の言語情報を活用していかねばならなくなっている、という見方ができる。
 なかには、このような数量的な取り扱いをすることで漫画本来の面白さが薄れるのではという指摘もあるが、データベースといった土台がしっかりすればするほど、あらゆる角度から「ドラえもん」の魅力の分析が可能になってくるという。平成11年度は、「ドラえもん学」の基礎固めを主に唱え、徹底して事実をデータ化するという作業を学生の協力を得ながら進めている。

■ドラえもん人気の秘密とは?
 1890年代に生まれた「シャーロックホームズ」が世紀を超え現代もなお世界的に人気を博している理由は、「犯罪」という人間の生存において普遍的なテーマが時代を超えて人々の心をとらえるからだという。「ドラえもん」が30年間にわたりこれだけ多くの人々に支持されているということの背景にも同じような構造がある、と教授は語る。「笑いや夢や冒険は、人類が生きるうえでなくてはならない普遍的なテーマ。けれども、『ドラえもん』は虚構の世界。『ドラえもん学』ではその虚構を前提にリアリティを考察する、つまり遊びを真剣にとらえるというわけ。これからの学問は従来のハードなとらえ方とは違った、どこかに遊びがあるものでないと有効性を持たないような気がする。漫画のような文化的発展がないと21世紀の富山の発展はあり得ない。そのためにも『ドラえもん』の素晴らしさを伝えていきたい」。

■ドラえもんに出会えて良かった
 ドラえもん研究が、すでに人生における大テーマになっている教授。膨大なデータの9割は教授自らが作成・管理しており、最近では生活のほとんどがドラえもん一色だという。そのエネルギーは一体どこからくるのだろうか?「データ分析一見、気の遠くなるような、無駄な作業に見えるかもしれない。けれども、全体を100としたら、残りの1パーセントや2パーセントに新しい視点が見つかる可能性もある。そう思って全身のエネルギーを捧げると不思議なことに疲れないんです。これは本当に好きじゃないと出来ない。57年間生きてきて、自分がここまで夢中になれる『ドラえもん』に出会えたことを、本当に幸せに思っています」。そう語る言葉の節々には、生活の中での遊びを大切にし、誰よりも「ドラえもん」を愛する気持ちが溢れていた。

■なお、ホームページ「ドラえもん学コロキアム」へのアクセスは次のとおり。
http://www.inf.toyama-u.ac.jp/doraemon/


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