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2018年 6月 13日 [ トピックス ]

No.860:心地よく響く木槌の音…井波の木彫刻、日本遺産に認定

 2018年5月24日、文化庁の「日本遺産」に、南砺市の「宮大工の鑿(のみ)一丁から生まれた木彫刻美術館・井波」が認定された。また、日本遺産「荒波を越えた男たちの夢が紡いだ異空間~北前船寄港地・船主集落~」に富山市と高岡市が追加認定された。歴史に思いを馳せながら、県内の日本遺産をめぐる旅へ出掛けてみよう。

●華麗で繊細、豪壮で大胆な木彫刻の魅力

 「日本遺産」(Japan Heritage)とは、全国各地の歴史的魅力や特色を通じて日本の文化や伝統を物語る「ストーリー」を文化庁が認定するもので、2015年度から始まった。ストーリーを語る上で欠かせない魅力溢れる有形や無形の様々な文化財群を、地域が主体となって総合的に整備・活用し、国内外へ発信していくことにより、地域の活性化を図ることを目的としており、No.707でも紹介した高岡をはじめ、現在全国で67件が認定されている。


▲井波彫刻(左)
▲八日町通り(右)

 八乙女山の山麓に位置する南砺市井波は、瑞泉寺の門前町として栄え、600年以上の歴史を誇る。この地域の代表的な伝統産業が井波彫刻で、和室で天井と鴨居の間に設置される欄間の彫刻の美しさでその存在を知るという方も多いだろう。始まりは約250年前にさかのぼり、大火後の瑞泉寺再建の際、京都から派遣された東本願寺の御用彫刻師・前川三四郎が地元の宮大工に技術を伝えた。宮大工たちは京都の芸術性の高い巧みの技を吸収し、技を磨き、華麗で繊細、豪壮で大胆な井波彫刻を生み育てていった。

 瑞泉寺の門前、石畳の美しい八日町通り沿いには今も彫刻工房や町家が建ち並ぶ。ガラス戸越しには、一心にノミを振るう木彫師の姿。「トントン」、「カンカン」と響く木槌の音も心地よい。七福神や十二支などの木彫刻を施した看板や表札が町のあちこちに飾られ、町全体が“木彫刻美術館”のような空間になっている。春には井波彫刻で飾られた屋台や獅子舞が町を練り歩き、地域の安泰や五穀豊穣を祈る。

 今回認定された「宮大工の鑿(のみ)一丁から生まれた木彫刻美術館・井波」では、このようにまち全体が「木彫刻美術館」のような空間となっており、町並みの木彫刻と今に続く技術の双方を体験できる点が評価された。井波彫刻を核に、井波別院瑞泉寺、瑞泉寺山門、獅子の子落とし、八日町通り、町家の木彫刻看板と表札、木遣踊り、郷土料理のよごし、かぶら寿司など、計33件の有形・無形文化財で構成する。その一部を紹介しよう。

 井波別院瑞泉寺は明徳元年(1390)に創建された古刹で、現存する北陸最大の木造建築物。井波彫刻誕生のきっかけとなった寺であり、粋を凝らした優れた彫刻装飾を数多く見ることができる。


▲瑞泉寺山門の「雲水一疋龍」(左)
▲瑞泉寺山門下から見る本堂(右)

 瑞泉寺山門の「雲水一疋龍」は井波彫刻の祖となった前川三四郎の作品で、明治12(1879)年の大火の折、龍が山門から抜け出し、近くの井戸の水を吸い上げて山門などに吹きかけて類焼を免れたと伝えられている。「獅子の子落とし」は瑞泉寺勅使門にある井波彫刻。番匠屋七左衛門の作で、日本木彫刻史上の傑作中の傑作といわれている。

 木遣踊りは、焼失した瑞泉寺を再建するため、五箇山から大木を運んだ際にうたわれた唄が起源とされる民俗芸能。毎年7月の瑞泉寺の伝統行事「太子伝会」で踊りが奉納され、八日町通りでは木遣踊りの町流しが行われる。

 「よごし」は、野菜を茹で細かく切り、味噌で味付けした郷土料理。かつて彫刻職人の修業時代を支えた食事の一つ。かぶらに切り込みを入れ、ブリ・サバなどを挟んで発酵させた「かぶら寿司」は正月料理として今も彫刻職人に好んで食されている。

●北前船寄港地・船主集落に富山市、高岡市追加認定

 「荒波を越えた男たちの夢が紡いだ異空間~北前船寄港地・船主集落~」は、2017年度に認定された7道県11町村に、富山市、高岡市など14道府県27市町の文化財が追加され、全国で最も広域にわたる日本遺産となった。

 江戸から明治時代にかけて、大坂から瀬戸内海、下関を経て、日本海を北上し、北海道にいたる西廻り航路を進んだ北前船。大坂の酒や瀬戸内の塩、北陸の米、わら製品などを運び、帰りに北海道の鰊肥(れんぴ)や昆布、海産物を買い付けて各寄港地に運んだ。


▲旧森家住宅(左)
▲西岩瀬諏訪社の大けやき(右)

 富山市からは、北前船で財をなした廻船問屋の旧森家住宅と旧馬場家住宅、北前船が入港する際に目印にしたとされる西岩瀬諏訪社の大けやき、九州から北前船の船乗りなどが伝えられたとされる民謡・岩瀬まだらの4件が構成文化財になっている。

 高岡市からは、北前船で財をなした廻船問屋の旧秋元家住宅(高岡市伏木北前船資料館)、廻船問屋出身の藤井能三が北前船の安全確保を目的に私財を投じて設立した全国初の私設測候所・旧伏木測候所庁舎・測風塔(高岡市伏木気象資料館)、北前船の船主や船頭が海上安全を祈って鳥居や燈籠などを奉納してきた伏木神社、京都から北前船によって運ばれてきたという伝説を有する勝興寺唐門、加賀藩直営の米蔵があった吉久の町並み、北前船で財をなした廻船問屋・菅野家の住宅など9件が構成文化財になっている。


▲旧秋元家住宅(左)
▲菅野家(右)

 初夏、木槌の音を聞きながら井波の町を散策したり、波音をBGMに富山湾岸を歩いたり…。木に命を吹き込む木彫師や、帆をあげて大海原を進む北前船の姿を思い浮かべながら、歴史の浪漫に浸ってみてはいかがだろう。

問合せ
●富山県教育委員会 生涯学習・文化財室
TEL.076-444-3456
FAX.076-444-4434
http://www.pref.toyama.jp/cms_sec/3009/


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