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2015年 8月 12日 [ イベント ]

No.719:暑い夏に心の栄養を!高志の国文学館、立山博物館・まんだら遊苑へ

 高志の国文学館では、県ゆかりの人気演出家・作家の久世光彦(くぜ てるひこ)氏(1935~2006)に焦点を当てた企画展「あの日、青い空から―久世光彦の人間主義」を開催中<平成27年9月7日(月)まで>。立山博物館・まんだら遊苑では平成27年8月21日(金)~23日(日)、夏の恒例イベント「まんだらナイトウォーク ―光りと香りのページェント―」を企画。夏の思い出づくりにぜひ観賞を!

●大ヒットドラマの興奮、よみがえる


▲ドラマ「時間ですよ」の舞台となった
銭湯「松の湯」の外観を絵で再現
(高志の国文学館)(左)
▲ドラマ関係の小道具などを
展示(高志の国文学館)(中央)
▲「まんだらナイトウォーク」の餓鬼の針山
(立山博物館・まんだら遊苑)(右)

 久世氏はTBSの大ヒットドラマシリーズ「時間ですよ」、「寺内貫太郎一家」などの演出、『昭和幻燈館』、『一九三四冬―乱歩』などの小説・エッセイ、第35回日本レコード大賞受賞曲「無言坂」の作詞を手掛けるなど、多方面でその才能を開花させた。

 70年前の1945年7月、久世氏は10歳で両親の郷里である富山市に疎開し、8月に富山大空襲と終戦を経験した。その後、高校卒業まで富山で過ごした。企画展では、久世氏の作品を紹介するとともに、10代の多感な時期を過ごした富山時代にスポットが当てられている。タイトルにある「あの日、青い空」は、久世少年が終戦の日に見た青い空だ。8月15日は終戦記念日。今夏、久世氏の創作の軌跡に触れるとともに戦争についてあらためて考えてみたい。


▲第一章「生きるための笑い」

 ロビーでは、「時間ですよ」の舞台となった銭湯「松の湯」の外観や風呂場が絵で再現されている。絵の前に置かれた四角い窓の電話ボックスや赤いポストが昭和の時代の郷愁を感じさせる。企画展は三章構成。第一章「生きるための笑い」では、「時間ですよ」、「寺内貫太郎一家」、「ムー・ムー一族」、「悪魔のようなあいつ」、「向田邦子スペシャルドラマ」の場面写真や放送台本、ドラマ関係の小道具、設計図をもとに再現した石屋・寺内家の模型などが並ぶ。眺めていると、「おかみさーん、時間ですよー!」の掛け声や、「ジュリ~!」と叫ぶ声が聞こえてきそうだ。

 エッセイ「赤い靴の秘密」の原稿や小説『卑弥呼』、小説『謎の母』などの創作ノートの展示もある。登場人物の相関図、物語のアウトラインなどが書かれており、創作の軌跡がうかがえる。また、建石修志氏が装画を手掛けた表紙画や挿絵の原画もずらりと並ぶ。緻密な鉛筆画や油絵とテンペラ画の混合技法で描かれた幻想的な絵画に誰もが魅力されるだろう。

●女性に宛てた手紙を初公開


▲第二章「少年の日の重い体験」

 第二章「少年の日の重い体験」では、1945年8月2日未明の富山大空襲から間もない8月4日に撮影された富山市中心部の写真などが展示されている。「信用できない期待感と、空虚な喪失感と、一つずつ左右のポケットに入れて、私たち少年は答えが欲しくて空を見た。その空の色が、美しい青色だった。(略)」と、エッセイの一文が添えられている。

 必見は、学生時代に久世氏が思いを寄せる女性に宛てた手紙やはがき24点。女性は美しい人妻で、久世氏が上京し、東京大学入学後もしばらく文通を続けていたとされる。手紙には、「その花車な白い指を薄暮の中に流して 河よ その傷ついた唇を ほとりの細石に癒して 河よ(略)」と記した自筆の詩「河―沈みゆく恋歌」(1956年8月27日)もあり、女性に感想も求めている。1957年2月1日の日付がある手紙には、「知的な操作だけで三島由紀夫の芝居なら完全な演出をやってみせる自信はあります」と書いている。演出家としての活躍を予感させるもので、興味深い。女性に宛てた手紙やはがきは、この企画展で初めて公開された。ここでしかみることができない貴重な資料だ。

 第三章「黙す心のうた」では、「無言坂」や「くちなし悲歌」など作詞曲をパネルで紹介。「人生最後に何を聴きたいか」をテーマに2006年3月に亡くなるまで約14年間連載を続けた歌にまつわるエッセイ『マイ・ラスト・ソング』などの著書、創作ノートが並ぶ。喫茶店など、エッセイ『時を呼ぶ声』に登場するポイントを紹介した「とやま散策マップ」も掲げてあるので、参考にしてゆかりの地を訪ねてみてはいかがだろうか。

 なお、企画展関連イベントして、記念トーク1「堤幸彦“極私的久世論”」が8月16日(日)14:00~15:30、記念トーク2「鼎談“久世光彦 万華鏡” 川上弘美・久世朋子・鵜飼哲夫」が9月4日(金)、富山県教育文化会館で開かれる。参加料は無料だが、予約が必要。高志の国文学館にTELまたはFAXで申込みを。

 高志の国文学館では、「久世さんにとって富山は創作の原点といえる場所。疎開してまもなく空襲と終戦を体験し、死の世界が恐ろしくも美しいものであることを目の当たりにした。テレビドラマでは筋を逸脱した、本気なのかふざけているのか、本当なのか嘘なのかわからなくなってしまうような、虚実ない交ぜの世界を演出し、視聴者はそれを楽しんだ。久世さんはそんな不合理でおかしな状態にこそリアリティを見い出した。企画展では、自筆原稿や手紙など資料350点を展示している。演出家、作家、作詞家としての足跡をたどってほしい」と話している。

●夏の夜の夢「まんだらナイトウォーク」

 立山に伝わる立山曼荼羅の世界を五感(見・聴・香・触・空)で体感できる「立山博物館・まんだら遊苑」。8月21日(金)~23日(日)の3日間、18:30~20:30(入苑20:00まで)に「まんだらナイトウォーク」が開催される。1,000個以上のキャンドルを使ったライトアップ、アロマを使った香りの演出など幻想的な夜が愉しめる。キャンドルの光を頼りに暗闇の中を歩いていきたい。


▲陽の道(左)
▲天界広場(右)

 まんだら遊苑は、地界、陽の道、天界、闇の道の4つのエリアで構成されている。立山曼荼羅の地獄をイメージした地界では、餓鬼の針山にキャンドルが灯り、神秘的な雰囲気に。耳を澄ませば、立山地獄に落ちた餓鬼たちの恐ろしい声……。ビャクダンの香りも地獄を感じさせてくれる。

 ハクサンフウロの香りが漂う陽の道では、キャンドルの光が天界へと導く。立山曼荼羅の浄土をイメージした天界の須弥山(しゅみせん)が青と白のLEDによる電飾で暗闇に浮かび上がる。天界の天卵宮に設けられた漆黒の盆に横たわり、胎内の記憶を呼び覚まし、心を癒すとしようか。

 なお、8月21日(金)17:00~19:00、立山博物館・遥望館で「トーク&ナイトウォーク 制作者が語る“まんだら遊苑”の魅力と可能性」が開催される。同苑を設計した六角鬼丈(ろっかく きじょう)氏(建築家・東京芸術大学名誉教授)、米原寛氏(立山博物館前館長)らがトークを繰り広げる。「トーク&ナイトウォーク」の参加は無料。同イベントに参加すると、同日のまんだらナイトウォークも無料となる。

 立山博物館では、「まんだら遊苑は今年で開苑20周年を迎えた。ナイトウォークの3日間は、普段体験することのできない夜の雰囲気を楽しむことができる。早めに入場すれば、地界の夕景も眺められる。ぜひ来場を」と話している。

問い合わせ
企画展「あの日、青い空から―久世光彦の人間主義」について
●高志の国文学館
TEL.076-431-5492
FAX.076-431-5490
http://www.koshibun.jp/

「まんだらナイトウォーク」について
●富山県[立山博物館]
TEL.076-481-1216
FAX.076-481-1144
http://www.pref.toyama.jp/branches/3043/3043.htm

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