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2014年 9月 24日 [ トピックス ]

No.676:「立山黒部」、日本ジオパークに認定

 北アルプス・立山連峰から富山湾までの高低差4,000mのダイナミックな地形と、約38億年もの歴史を物語る大地の上に凝縮された自然、恵み……。富山県東部9市町村にまたがる「立山黒部」エリアが日本ジオパーク委員会から「日本ジオパーク」に認定された。同パークは、美しい自然景観や学術的に価値のある地形を有する「大地の公園」を指す。富山の山、川、海の歴史を辿り、大地の遺産をジオ(大地、地球を意味する)の視点から探ってみよう。

●38億年×高低差4,000m!体感しよう ダイナミックな時空の物語


▲立山黒部ジオパークのロゴマーク(左)
▲みくりが池と雄山(右)

 ジオパークとは、“ジオ(Geo)”と公園を意味する“パーク(Park)”を組み合わせた言葉。大地の成り立ち、地形、物質をテーマに、地球全体の自然環境、歴史、文化、暮らしなどを展示物とみなした「大地の公園」を表す。ユネスコが支援する「世界ジオパークネットワーク」(GGN)が2004年から審査制度をスタート。「世界ジオパーク」として現在32カ国の111地域、日本では先日認定された「阿蘇」をはじめ「洞爺湖有珠山」、「糸魚川」、「阿蘇」など7地域が認定されている。また、GGNの下部組織の日本ジオパーク委員会が2008年から独自に「日本ジオパーク」を選定。今回、「立山黒部」、「南紀熊野」、「天草」が認定されたことにより、日本ジオパークは36地域(そのうち7地域は世界ジオパークと重複)となった。

 「立山黒部」エリアは、富山県東部9市町村(富山市、魚津市、滑川市、黒部市、舟橋村、上市町、立山町、入善町、朝日町)の陸域2,769平方キロメートルと、海域(神通海脚、黒部川扇状地の海底地形、宮崎海底断層を含む)1,135平方キロメートルを合わせた総面積3,904平方キロメートル。

 2013年12月、地域の民間企業や大学、NPO法人などの関係者を中心に「立山黒部ジオパーク推進協議会」<代表:中尾哲雄インテック最高顧問>が設立され、ジオパーク活動への取り組みがスタート。ジオツアーやガイド養成講座、シンポジウムなどが開催されてきた。今年3月には県東部9市町村からなる「立山黒部ジオパーク支援自治体会議」<会長:堀内康男黒部市長>が設置され、富山県とともに協議会の活動を支援してきた。


▲弥陀ヶ原(左)
▲称名滝(中央)
▲黒部峡谷(右)

 「立山黒部」のテーマは、「38億年×高低差4,000m! 体感しよう ダイナミックな時空の物語~雪と水と大地の悠久の営み~」。海抜3,000mの立山連峰から水深1,000mの富山湾までの「高低差4,000m」、大陸起源の岩石や日本海誕生の地層など「38億年の大地の歴史」、氷河、多雪、急流河川、湧水群、埋没林、海底林などが示す「ダイナミックな水循環」、高山植物から“天然の生け簀”と呼ばれる富山湾までの「特有の生態系」、山岳信仰や伝統文化など「独特の地形に育まれた文化」、地域の自然や文化を体験し、守り伝える「住民主体の積極的な活動」が大きな特徴だ。

 日本ジオパーク委員会では、「北アルプスから富山湾にいたる山・雪・川・扇状地・海を結ぶ壮大な水循環を学ぶことができる。氷河、ライチョウ、高山植物、立山信仰、砂防・治水、電源開発の歴史、湧水群など特徴ある人々の自然と暮らしの関係が息づいている。民間主導型のジオパークの新たな運営モデルになる可能性がある」と、認定理由を挙げている。

 立山黒部ジオパーク推進協議会では、認定を受けてロゴマークを制作。流れゆく時間と物質の循環を表現した砂時計の中に北アルプス・立山連峰、扇状地、水の流れと富山湾を配し、「立山黒部」エリアの空間的な広がりを表現している。

●ジオサイト、ジオポイントをクローズアップしてみると


▲黒部市生地の清水(左上)
▲杉沢の沢スギ(右上)
▲ヒスイ海岸(左下)
▲魚津埋没林(右下)

 「立山黒部」エリアは、わずか50kmほどの距離に、3,000m級の峰々がそびえる立山連峰から深さ1,000mに至る富山湾まで広がる世界的にも珍しい地形。日本海、富山湾からの水蒸気は、立山連峰に大量の雪や雨をもたらす。国内で初めて確認された「氷河」、高さ20mに迫る雪の壁が続く「雪の大谷」、神秘的な色合いを見せる「みくりが池」、湿原に池塘(ちとう)が点在する「弥陀ヶ原」、350mという日本一の落差を誇る「称名滝」などはまさに自然の賜物だ。

 豊富な水量と急流は、日本一深いV字峡谷・黒部峡谷や黒部川扇状地を作り出した。川の水は大地を潤し、幸を育む一方、伏流水となって地下にもぐり、扇状地の末端部、海岸近くで清水(しょうず)となって湧き出る。「杉沢の沢スギ」は、湧水帯に生育するスギ林(国指定天然記念物)。枝が曲がって着地したところから芽を出す伏条現象が見られる。冬でもあまり雪が積もらないため、温暖帯の植物が生育していることも特徴だ。

「ヒスイ海岸」は、ヒスイの原石が打ち上げられることで知られる美しい海岸。太古のロマンを感じながら、原石探しが楽しめる。「魚津埋没林」は約2,000年前、片貝川の氾濫によって流れ出た土砂がスギの原生林を埋め、その後の海面上昇によって地下に密閉されたと推測されている。片貝川上流部の南又谷に生育するタテヤマスギは太い幹に空洞があることから「洞杉」と呼ばれ、根元に巨石を抱え込むように生育している。2010年に黒部市宇奈月地域で発見された日本最古(38億年前)の鉱物「ジルコン」も大地の鼓動を感じさせてくれる。

 北陸新幹線開業が約半年後に迫るなか、「立山黒部」の日本ジオパーク認定によって、ふるさと富山の魅力発信や、教育、観光振興、地域活性化などに弾みがつくと期待する声も多い。それは、地域への愛着、誇りにもつながっていくだろう。今後、立山黒部ジオパーク推進協議会では、2020年の東京オリンピックまでに世界ジオパークに認定されることを目指し、活動していく考えだ。

問い合わせ
●立山黒部ジオパーク推進協議会
TEL.076-431-2089
FAX.076-431-2089
http://tatekuro.jp/
http://facebook.com/tatekuro

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