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2013年 12月 11日 [ トピックス ]

No.636-1:国内初、アカムツ(ノドグロ)の稚魚生産に成功

富山県農林水産総合技術センター水産研究所(滑川市高塚)など3機関は共同研究により、高級魚「アカムツ」の稚魚の生産に国内で初めて成功した。滑川沖で採水した富山湾の海洋深層水と表層水を混ぜた水槽で飼育し、現在約30匹が体長20~30mmに成長。同研究所では、昨年富山湾で漁獲された成魚の550日を超える長期飼育にも成功している。

●人気の高級魚、採卵から稚魚の飼育へ


▲ふ化後63日目で約18mmまで育った稚魚
(富山県水産研究所提供:11月24日撮影)

 「アカムツ」は、刺身や焼き魚、寿しネタとしておなじみの高級魚。ホタルジャコ科に属する暖海性魚類で、北海道以南の日本海、太平洋に広く分布する。大きいもので全長約50cm、体重約2kgにもなる。口を開けると、喉の辺りが黒いことから“のどぐろ”とも呼ばれている。生態がはっきりと解明されておらず、生きた成魚も確保しにくいため、人工的な稚魚の生産技術は開発されていなかった。



▲稚魚を飼育している水槽と
飯田直樹主任研究員(左)
▲ふ化後3日目で体長約2mmの仔魚
(富山県水産研究所提供:9月24日撮影)(右)

 県水産研究所では、今年から独立行政法人水産総合研究センター日本海区水産研究所(福井県小浜市)と新潟市水族館「マリンピア日本海」(新潟県新潟市)と共同で研究を始めた。9月19日に新潟県寺泊沖で刺網漁業者の協力により、アカムツの成魚から卵と精子を取り出し、船上で人工授精させて約40万粒の受精卵を確保。これらを3機関で分けて、それぞれの小型水槽で飼育試験を開始した。

 県水産研究所では9月21日、約5万6,000粒の受精卵から9,600匹の仔魚(しぎょ:卵からふ化して稚魚になるまでの段階)がふ化。滑川沖で採水した富山湾海洋深層水と表層水を混ぜた水槽で飼育し、仔魚が背びれ、胸びれ、尾びれなど成魚と同じ形のひれを持つ稚魚に成長するのに適した環境を調べた。その結果、水温22~23度の水槽で、体長約0.1mmの動物プランクトン「ワムシ」が初期の餌として適していることがわかった。現在、約30匹が体長20~30mmの稚魚に成長している。

●今後、資源管理のための稚魚放流に向けて


▲体長約30cmの成魚の長期飼育にも成功

 アカムツの身は季節を問わず脂がのっており、「白身のトロ」と呼ばれている。日本海産の魚介類の中でも市場価値が高く、浜値でキロあたり4,000円以上、大きいもので1キロ1万円以上で取り引きされることもある人気の魚種だが、生態は解っていない。また、水温の変化やプランクトンの増減などの影響を受けやすく、全国の漁獲量は年によって変動が大きい。天然資源の維持と有効利用するための資源管理に向け、人工的にふ化させて飼育する技術の開発が求められてきた。今回の稚魚生産の成功により、資源の供給などに期待が高まっている。

 なお、県内の漁獲量は年間10~15tで、旬は8~10月の産卵期。暖流の対馬海流が入り込む富山湾では、200mより浅い表層部に生息しているとされる。

 県水産研究所の飯田直樹主任研究員は、「昨年5月に富山湾で漁獲された成魚を確保し、550日を超える長期飼育にも成功した。今後、富山県で漁獲されたアカムツから採卵し、県内で完結できる採卵・生産技術を確立させたい。また、稚魚を大量生産できる飼育条件を解明し、資源管理のための稚魚放流にも役立てたい」と話している。

問い合わせ
●富山県農林水産総合技術センター水産研究所
TEL.076-475-0036
FAX.076-475-8116
http://www.pref.toyama.jp/branches/1661/

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