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2013年 10月 30日 [ イベント ]

No.630-2:美術ファン必見、晩秋の展覧会へ

深まる秋、芸術の香りに誘われて、富山県水墨美術館(富山市)で開催中の展覧会「お宝拝見―わが社の逸品」へ。県内の企業や個人コレクターが所蔵する美術品を集め、展示するという全国でも珍しい美術展だ。横山大観やマルク・シャガールらの作品約80点を紹介。11月4日(月・振休)までを前期、6日(水)から24日(日)までを後期として、展示替が行われる。また、樂翠亭美術館(富山市)の「現代の工芸、今―いつつの言葉―」もこの季節にぜひ鑑賞したい展覧会だ。

●秘蔵の名品ずらり、「お宝拝見―わが社の逸品」


▲木村立嶽「唐獅子図屏風」明治時代初期
東亜薬品(株)蔵などが並ぶ第1展示室

 富山県水墨美術館の展覧会「お宝拝見―わが社の逸品」では、江戸後期以降に活躍した物故作家の作品が「自然へのまなざし」、「人へのまなざし」、「対象へのまなざし」の3つのテーマに分かれて展示されている。日本画のみならず、外国の画家たちの油彩画から日本の洋画家たちの作品まで、名品、優品が勢ぞろい。“富山の文化の底力、美意識の高さを感じた”、“著名な作家が揃っている”などと感嘆の声が上がっている。作品は、普段、県内企業のロビーや応接室、個人宅に飾られ、一般に公開される機会はほとんどない。全国の美術ファン必見、この機会に富山に足を運び、ぜひ鑑賞してほしい。



▲横山大観「雨餘」1941年
リードケミカル(株)蔵(左)
▲竹内栖鳳「喜雀」1940年頃
リードケミカル(株)蔵(右)

 日本画がずらりと並ぶ「自然へのまなざし」では、富山藩の絵師で狩野派四天王の一人とされた木村立嶽の「唐獅子図屏風」(六曲一双)が目を引く。豪快に描かれた唐獅子がいまにも屏風から飛び出してくるかのようだ。近代日本画壇を代表する巨匠、横山大観の「雨餘(うよ)」は雨あがりの山景を描いた作品で、雨あがりの静寂、空気が伝わってくる。近代日本画の先駆者、竹内栖鳳の「喜雀」(後期展示)は雀の姿を軽妙に描いている。栖鳳は動物、雀を題材とした絵を多く描いた画家。雀の姿はなんとも愛らしく、思わず笑みがこぼれる。「ちゅんちゅん」とさえずりが聞こえてきそうだ。

●お気に入りの作品を探してみては?


▲アルフォンス・ミュシャ「4つの宝石」より
<ルビー> 1900年 (株)インテック蔵(左)
▲中川一政「椿」1987年 (株)源蔵(右)

 「人へのまなざし」では、世界的に知られるマルク・シャガールの「ノートルダムの怪物たち」、マリー・ローランサンの「バラ色のリボンをした若い娘」、藤田嗣治の「少女」、「帽子の少女」、村上華岳の「観世音像」など、バラエティに富んだ作品を鑑賞できる。描く対象が異なれば、こうも絵が違うものかと感じてしまう。後期展示では、アルフォンス・ミュシャの「4つの宝石」なども登場するから楽しみだ。

 「対象へのまなざし」では、薔薇、向日葵など、生涯を通じて多くの花の絵を描いた洋画家、中川一政の「椿」が印象的。濃い藍色に浮かぶ、椿の赤が心に残る。ちなみに中川一政といえば、ますのすし本舗 源のパッケージの鱒の絵と文字を手がけるなど、富山との関わりも深い。このほか、篠田桃紅の「回想」、ベルナール・ビュッフェの「アヒルのある静物」、ジャン・ジャンセンの「ランプのあるアトリエの静物」なども目を引く。特別出品として、アンパンマンで知られる、故やなせたかしさんの「新雪の富士」は子どもたちにぜひ鑑賞してほしい作品だ。

 県水墨美術館では、「富山の地で大切に守られてきた名品の魅力を発掘しようと、2年ちかくをかけて準備してきました。県内コレクターの審美眼の確かさ、懐の深さを感じています。コレクターの部屋に飾られることを考えれば、癒し系、和み系の作品が多いようです。普段目にすることのできない貴重な作品が揃っています。自分だけのお気に入りを探すようなつもりで会場を回れば、作品をより深く味わえます」と話している。

●樂翠亭美術館「現代の工芸、今―いつつの言葉―」


▲「現代の工芸、今―いつつの言葉―」(左)
▲瀟洒(しょうしゃ)な佇まいを見せる
樂翠亭美術館(右)

 この季節の展覧会をもう1つ紹介しよう。樂翠亭美術館(富山市)の「現代の工芸、今―いつつの言葉―」も見逃せない展覧会だ。同美術館は富山駅北に2011年5月に誕生した新しい美術館。1950年代に建築された純和風建築や土蔵造りの蔵などを活かしたアート空間が広がる。回遊式日本庭園の美とともに、匠の技から現代作家まで多彩な表現を鑑賞することができる。

 「現代の工芸、今―いつつの言葉―」では、陶芸の小川待子さん、黒田泰蔵さん、金属工芸の畠山耕治さん、ガラス工芸の扇田克也さん、高橋禎彦さんと、国内外で活躍する第一線作家の作品が和の建築空間に展示されている。5人の作家は、従来の手法や技法、既存の工芸の概念にとらわれることなく、独自に素材と向き合い、作品づくりに精進している。富山県・高岡銅器ゆかりの畠山さんの作品は、青銅を腐食させ、赤や黄色などの色彩を生み出したユニークなもの。工芸という言葉では語りつくせない、新たな可能性を感じさせる。

 樂翠亭美術館では、「日本建築の粋を凝らした趣のある空間に、5名の作家たちの作品約100点を展示しています。作品のコラボレーションによりしつらえられた茶室もあります。会期は11月24日(日)まで。全国の方々にぜひ鑑賞いただきたいですね」と話している。

問い合わせ
「お宝拝見―わが社の逸品」について
●富山県水墨美術館
TEL.076-431-3719
FAX.076-431-3720
http://www.pref.toyama.jp/branches/3044/3044.htm

「現代の工芸、今―いつつの言葉―」について
●樂翠亭美術館
TEL.076-439-2200
FAX.076-439-2233
http://www.rakusuitei.jp/

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